試乗インプレッション
フルモデルチェンジしたBMW「3シリーズ」、まずは「330i M Sport」試乗
2019年3月26日 00:00
スポーツセダンの定番中の定番と言えばBMW「3シリーズ」だ。その3シリーズが7年ぶりにフルモデルチェンジした。
どこから見ても安定したプロポーションを持ち、精悍でシャープなデザインだ。フロントグリルもシングルフレームとなると同時に、ヘッドライトまわりも整理されて好感が持てる。
ボディサイズは全長が+70mmの4715mmと長くなり、幅も+25mmの1825mmとなった。全高は1430mmで逆に10mm低くなっている。ホイールベースも40mm伸びた2850mmである。ちなみにトレッドも40mm広げられている。ホイールベース:トレッド比はBMWが好ましいとする1.73になっている。
また、サイズアップされているが軽量化にも努めており、アルミ部材や高張力鋼板の使用拡大で55kgの軽量化が達成された。サスペンション、トップマウント、ボンネット、フェンダーなどはアルミが使われる。
試乗会に用意されたのは「330i M Sport」。導入直後はこのモデルだけになるが、追って「320i」が投入される。
エンジンは5シリーズの流れを汲むモジュラーエンジンで、直列4気筒DOHC 2.0リッター。新開発エンジンはBMWのツインスクロールターボ技術を結集したもの。バルブトロニック無段可変バルブ制御、ダブルVANOS吸排気無段階可変カムシャフト制御システムなどと組み合わされたBMWのエンジン技術の集大成だ。直噴の噴射圧は従来の150barから350barに上げられ、より細かい霧状の燃料が供給されて燃焼効率の向上が図られた。
190kW/400Nmのエンジンはトルクバンドが広く、1550-4400rpmで最大トルクを発生する。このことからも分かるように低速からの力強さは群を抜いており、アクセルを踏んだ時のタイムラグも自然吸気エンジンに近く、少しアクセルペダルに足を乗せたスタンバイ状態では素晴らしい加速をする。また、エンジンの出力はコントロールしやすく、郊外路やワインディングロードでは本領を発揮する。BMWらしいドライバーに優しいパワーユニットだ。
トランスミッションは第3世代のZF製8速ATで、内部抵抗を25%低減して効率化を図っており、ギヤ比もワイドレシオとしている。BMWでは多段化は8速で十分としているが、事実ステップ比もリズミカルで、適度に散らされたギヤ比も小気味よくシフトする。ワイドレシオは低速での力強さ、高速でのクルージングにぴったりと合っている。ちなみにWLTC燃費は13.2km/Lと優れている。
装着タイヤはオプションのブリヂストン「TURANZA」で、フロント225/40 R19、リア255/35 R19のランフラットを履き、「19インチ M ライト・アロイ・ホイール・ダブルスポーク・スタイリング791M バイ・カラー(ジェットブラック)」も精悍でM Sportのスタイルによくマッチしている。
路面コンタクトはゴツゴツした感じはなく、なかなかいい感じだ。ただ、まだサスペンションの路面とのアタリが馴染んでいないのか、ヒョコヒョコした上下動が気になった。
直進安定性はもちろん高いが、ハンドリングも優れており、BMWの面目躍如といったところだ。これまでと少し方向性を変えたのはキビキビというよりもしっとりとした動きで、プレミアムスポーツセダンらしい味付けとなったこと。長くなったホイールベースからも推測されるように、かつての5シリーズの後を引き継いでいるように見える。
M Sportのブレーキは、ブルーに塗られたキャリパーが目立つフロント4ピストンでストッピングパワーの高そうなキャリパーが装着される。
ローダウンされたサスペンションはロールも少なく、また前後バランスに優れて、低速から高速まで安定した姿勢を保ったまま優れたライントレース性を保つ。また、可変ダンパーを採用することで、ドライブモードの変更、例えばスポーツモードを選ぶとさらにロールが少なくなり、メリハリが効いてモードが分かりやすい。もちろんアクセルのツキもよくなるので、クルマの性格が異なる。それでいて乗り心地がしなやかなのが素晴らしい。最初からプレミアムセダンの素性を感じることができる。
ちなみに、M SportはLSDの働きをするアクティブデファレンシャルを持っており、コーナーの立ち上がりではトラクションと安定性に貢献している。具体的な数値は出ていないが、ボディ剛性の向上も、安心感の高い居住性や正確なハンドリングに大きく貢献している。
インテリアもプレミアムセダンに相応しくよく作り込まれており、キャビンも心地よい空間だ。これまでの3シリーズからさらに質感が上がっている。特にインパネはフル液晶で、質感が大幅に上がっただけでなく、さまざまなインフォメーションを取り出せ、スポーツを基軸にしたBMWらしさを見せている。
右側に配置されたタコメーターはアストンマーティンのように左回転だが、慣れると違和感はない。そして右回転の左側のスピードメーターとの間にはナビゲーションなどの情報が入り、グンと近代的でなかなかクールだ。
また、最近のプレミアムブランドでこぞって取り入れているAIを使ったコネクトビリティでは「OK、BMW」(呼び出し音声は変えられる)と呼びかけると、ナビ設定などをはじめ、さまざまなことが音声でできる。やってみると最初は嫌われたのか反応が鈍かったが、次第にレスポンスがよくなった。この「OK、BMW」は学習機能が備わり、回数を重ねるとさらに反応、知識が広がるという。
安全面でもBMWは積極的だ。新しい3シリーズでは全グレードにモービル・アイのシステムを使った3眼カメラを装備し、ごく近距離から中距離、遠方までをカバーする。レーンキープ性能はもちろん、レーダーと組み合わせて遠方の危険予測も正確性を増した。「7シリーズ」に匹敵する性能を有するのが新しい日本仕様の3シリーズだ。
興味深いのは「リバース・アシスト」という機能で、例えば狭い道に入り込んでバックしなければならない時など、50mまでは自動的に戻ってくれる。何もしないでハンドルが小刻みにぐるぐると回るさまはびっくりするが、私のようにバックが苦手なドライバーには頼もしいシステムだ。
当初は330i M Sportだけでスタートするが、追って330iと同じコンポーネントをデチューンした320iが登場する。これは日本向けのスペシャル仕様で、基本スペックは330iと同じとなり、買い得感が非常に高い。ベースグレード「SE」(受注生産モデル)は452万円、「Standard」は523万円、M Sportは583万円で、従来モデルに比べてもなかなか魅力的な設定だ。ちなみに紹介した330i M Sportは632万円。
日本市場を重視した気合の入ったフルモデルチェンジである。