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スバル オブ アメリカの「LOVEキャンペーン」。9年連続販売記録更新を実現するマーケティングを現地ディーラーで確認

チャリティやボランティアへの参加などスバルと地域コミュニティのかかわりを深めるディーラー

「WORLD SUBARU」Executive ManagerのJoe Wajda氏、SUBARUアンバサダーを務めるダニエラさん

 スバルの米国子会社SOA(SUBARU OF AMERICA)における2017年の年間販売台数は64万7000台。9年連続で販売新記録の更新を続け、2008年の年間販売台数18万8000台から、およそ3.4倍の成長を遂げた。

 その成長を実現させた要因の1つは、北米市場のニーズに合わせた車両の供給。ニューヨークモーターショーで新型モデルを発表した「フォレスター」については、第1世代フォレスターの累計販売台数23万7794台に対して、第2世代が29%増の30万5718台、第3世代が56%増の37万688台、第4世代が248%増の81万5189台と、北米市場のニーズに合わせて世代を重ねるごとに販売台数を増加させた。

 SOAにおけるフォレスターの2017年販売台数は17万5000台であり、SOAにおいて37%の販売台数を占める重要なモデルとなっている。

ニューヨークショーで公開された新型「フォレスター」(北米仕様)

 一方、市場のニーズに合わせた車両の供給と合わせて、SOA独自の取り組みとして「LOVEキャンペーン」が2008年からはじまった。ユーザーの感情に訴えかけるエモーショナルな広告宣伝やスバルと地域コミュニティとのかかわりを深める販売店での取り組みがあったという。

 今回、このLOVEキャンペーンについて、SOAでマーケティングを担当するSUBARU OF AMERICA Senior Vice President Alan Bethke氏、現地ディーラーの「WORLD SUBARU」Executive ManagerのJoe Wajda氏、SUBARUアンバサダーを務めるダニエラさんの3名に話を聞けたので、ここにお伝えする。

SUBARU OF AMERICA Senior Vice President Alan Bethke氏

SUBARU OF AMERICA Senior Vice President Alan Bethke氏

 SOAが2008年にスタートさせた「LOVEキャンペーン」により、TV-CMはそれまで機能や値段にフォーカスした一般的な自動車の広告宣伝の内容から、ユーザーの感情に訴えかけるエモーショナルなTV-CMへと内容が変化した。SUBARU OF AMERICA Senior Vice PresidentのAlan Bethke氏からは、LOVEキャンペーンを展開する背景などについて語った。

 LOVEキャンペーンを展開する前の2007年に実施した調査によると、スバル車を購入しなかった人にその理由を聞くと、スバルブランドを知らない、スバルというブランドを知っていても何か意見を持つほど知っている存在ではないという人が多いという結果を得たという。さらにスバルのブランドアイデンティティはどこにあるのか、スバルユーザーについて調査をしたという。

2017年の調査でスバル車を購入しなかった人の3分の2は、スバルブランドを知らない、スバルというブランドを知っていても何か意見を持つほど知っている存在ではないという

 Bethke氏は「スバルオーナーについて調査したところ、高い教育レベルを持つ方が多く、収入も高く、1度クルマを購入したら長期間保有し、1度購入すると気に入っていただいて次も購入してもらえるという傾向がある。また、自分の人生に対して非常に情熱的で、自分の好きなことを主張したり、意見を持っている」とスバルオーナーの特徴を示した。

「LOVE」という言葉をキャンペーンに使ったことに関しては、「カー雑誌にある投稿欄を見ると、スバルオーナーの方が自分のクルマに対してLOVEという言葉を使っていることに気づき、これをマーケティングに採り入れた」と明かした。

スバルのブランドアイデンティティを探るため、スバルユーザーについて行なった調査により分かったこと。高い教育レベルを持ち、収入も高く、1度クルマを購入したら長期間保有し、1度購入すると気に入って次も購入するという傾向がある
バンパーにステッカーを貼ったりして自分の好きなものを表現している
カー雑誌の投稿欄で、スバルオーナーが自分のクルマに対してLOVEという言葉を使っていることが多く見られたという
LOVEキャンペーン
LOVEキャンペーンの広告宣伝を観ていない人(赤)、観た人(緑)の認知度調査

 LOVEキャンペーンがスタートした2008年の年間販売台数18万8000台から、2017年は64万7000台を販売するブランドに成長した。

北米で販売を開始した1968年からの販売の推移

 Bethke氏は「1つは市場に合った商品が供給されたこと、マーケティングを通じてブランドアイデンティティが与えられたことで、40年間のスローな成長から急速な成長をすることができ、過去9年間で販売新記録を更新した。現在のマーケットシェアは3.8%と過去の1%から大きな成長を遂げ、インセンティブについても需要に対して適正な供給が行なわれることで、在庫レベルでも低位。収益性で見てもディーラーから高い評価を得ている」と分析する。

 商品面におけるユーザーの満足度に関して、Bethke氏は「商品に関する満足度の1つは安全性が高いところ。クラッシュセーフティでの評価やアイサイトなど、安全への取り組みが受け入れられている」と話した。

 Bethke氏は「スバルにブランドアイデンティを与えるのがLOVEキャンペーンの使命。SOAによるTV-CMは、機能や値段にフォーカスした一般的な自動車の広告宣伝と違い、エモーショナルなものに重きを置いたもので、ほかのブランドとの違いを感じられる。お客さまがスバルに対してLOVEと感じていただける範囲は広がっており、スバルが実施しているサービス、コミュニティに対する寄付や貢献が理由の1つになってきている」と話した。

LOVEキャンペーンが展開された9年間の振り返り

「WORLD SUBARU」Executive Manager Joe Wajda氏

「WORLD SUBARU」Executive Manager Joe Wajda氏

 LOVEキャンペーンにおいて、ユーザーと接する販売店ではどのような取り組みが行なわれたのか、スバル車の販売を手掛ける「WORLD SUBARU」が展開するニュージャージー州にある店舗を訪問。同店舗のExecutive Manager Joe Wajda氏に話を聞いた。

 同店舗では現在65人が働いており、新車や認定中古車の販売、整備までを行なっている。現在、全米にスバルのディーラーは631店舗あり、2017年の販売台数が64万7000台なので店舗数で割ると平均1000台となる。同店舗では2017年に約1600台の新車を販売し、全米で84番目に多く新車を販売する店舗という。

ニュージャージー州にあるWORLD SUBARUの店舗
お店にある在庫車を販売するのが基本で、店舗のまわりには多くのスバル車が展示されている
店内には「XV」「アウトバック」「フォレスター」が展示されていた
サービス工場

 この9年間の成長について、Wajda氏は「2008年のことをふり返ると、リーマンショックに始まる不況の中で、スバルは正しいクルマを、正しいタイミングで用意してくれたと考えている、安全性が高く、買い求めやすいクルマを提供してくれた。同時に(2008年は)LOVEキャンペーンをスバルが始めたタイミングで、これは非常に成功しているキャンペーン。ユーザーはスバルのクルマだけでなくブランドを買っている。販売店との関係を含めて買っていただいていると考えている」と話した。

 近年のインターネットの発達により、クルマの購入を検討している人はオンラインでクルマのことをリサーチして、最終的な段階でディーラーに足を運ぶ人が増えている現状だという。ユーザーとディーラーの関係性が薄れるなか、LOVEキャンペーンではチャリティやボランティアを通じてスバルと地域コミュニティの関係を深めることに取り組んだという。

 SOAでも「Share The LOVE」というチャリティを展開しており、クルマ1台に対して250ドルをSOAが認定した4つの団体から選んで寄付。あるいはローカルのチャリティとして、各店舗で指定する団体に寄付できるというプログラムを用意している。

 Wajda氏は「LOVEキャンペーンでは、SOAのビジョンと合わせて、販売店とコミュニティとのかかわりについて取り組んでいます。ただクルマを販売するだけでなく、チャリティやボランティアなどコミュニティとのかかわりを強めることで、地域の中で販売店というだけではないもう1歩上の存在になっていると考えています」と明かした。

WORLD SUBARUでは小児がんのチャリティ「ARMS WIDE」との協力で25万ドルを寄付するなど、店舗としてチャリティやボランティアへ取り組んでいるという
SOAが展開する自分のクルマに趣味などを組み合わせたバッヂをプレゼントするキャンペーンなど、ユーザーとディーラーのかかわりを深めるコンテンツを展開する
店内には販売成績No.1を示す垂れ幕が並ぶ
「WORLD SUBARU」Executive Manager Joe Wajda氏のオフィス

SUBARUアンバサダーのダニエラさん

SUBARUアンバサダーのダニエラさん

 LOVEキャンペーンの目指す、スバルと地域コミュニティとのかかわりを深める大きな役割を担うのが、SOAが認定する「SUBARUアンバサダー」の存在だ。最後にSUBARUアンバサダーを務めるダニエラさんに話を聞いた。

 ダニエラさんは、これまでに9台のスバル車を購入し、そのうち7台は自分でエンジンをリビルドしたというスバリスト。歴代の購入車は1998年式「インプレッサ RS」、1999年式の「インプレッサ RS」、1999年式「フォレスター」、2001年式「アウトバック」、2000年式「インプレッサ RS 4ドア」、2002年式「フォレスター」、2004年式「STI」、2006年式「WRX」、2009年式「WRX」、2016年式「WRX」を購入。

 現在は1999年式「フォレスター」、2009年式「WRX」、2016年式「WRX」の3台を保有するという。取材日は、2016年式の「WRX」で店舗に駆け付けた。

2016年式の「WRX」で店舗に駆け付けた

 ここでSUBARUアンバサダーというプログラムについて説明すると、昨今クルマの購入を検討する際にオンラインでリサーチする人が増えているのは先に説明したとおり。しかし、そういった人たちも最終的には実際にクルマに乗っていて詳しい人たちから話を聞きたいという思いがあり、ダニエラさんのように実際に乗っていて詳しい人が、このクルマに乗るとこんな特徴があるんだというのを伝えるのがSUBARUアンバサダーの役割という。

 ダニエラさんのSNSにはInstagramで2500人強、Facebookでは1000人強のフォロワーがいるといい、クルマの購入を検討している人と一緒に新車でどういった選択肢があるのかを紹介するほか、SNSでの活動にとどまらず、実際に店舗で会って話をすることもあるという。

SUBARUアンバサダーとして活動するダニエラさんの名刺。実際に相談に乗った人とは1年後も交流があるという

 さらに、チャリティやボランティアにも参加。フロリダをハリケーンが襲ったときには、SUBARUアンバサダーが集まって衣服をオーダーしてチャリティに送った際には、SOAからのバックアップもあり当初想定した倍の数を送ったこともあるという。

 こうしたSOAが選定するSUBARUアンバサダーは現在1万1000人いるといい、スバル車の販売増と合わせて、SOAではアンバダサーを増やしていく方針という。

 ダニエラさんは「前の夫と離婚して1人になり、好きなことをやれるようになってクルマにのめり込めるようになった」と、スバル車にハマったきっかけを話した。「過去に後ろから追突されて、クルマが転がるような事故に遭いましたが、その時にケガもなく自分で歩いて帰れることができ、それ以来スバルしか買わなくなった。スバルは多くの種類を持っているわけではないですが、質という部分ではほかのメーカーより勝っていると思う」とスバル車に対するイメージを語った。

 SUBARUアンバサダーに対しては、オートショーへのチケットのプレゼントや新型モデルの試乗案内など、アンバサダーとして活動するための情報提供などはあるが、金銭的な報酬はなく名誉のみ。

 スバル車の魅力について聞いてみると、ダニエラさんは「1番の魅力は4WD。FA20型エンジンは今までで1番のエンジン。これにSTIのトランスミッションを載せられたら最高だわ」と話した。