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ホンダ、今年発売の新型「フィット」「アコード ハイブリッド」に搭載する安全技術説明会
緊急通報システム、事故回避支援システムなどの技術・サービス
(2013/3/29 18:04)
本田技研工業は3月29日、今年発売予定の新型「フィット」「アコード ハイブリッド」に搭載する安全技術などについての説明会を開催した。
今回発表された内容は大きく4つ。1つ目は、初夏に発売予定の新型アコードに搭載する「緊急通報システム」。2つ目と3つ目は今年発売予定の新型フィットに搭載するもので、事故回避支援システム「City-Brake Active System(シティ ブレーキ アクティブ システム)」と、安全運転を促すための「安全運転コーチング」機能。4つ目は29日から一般公開した、急ブレーキ多発地点データや交通事故情報などを活用した「SAFETY MAP」について。
説明会には同社の日本営業本部長 常務取締役 峯川尚氏、経営企画部 参事 杉本富史氏が出席し、これらの概要を説明した。
はじめに登壇した峯川氏は、「日本の交通事故の死亡者数は減少傾向にあるが、依然として年間約4500人の尊い命が失われている。2018年を目処に、交通事故死者数を2500人以下、世界一安全な道路交通の実現を目指すという政府目標に向け、安全をさらに進化させていくことが必要」と、今回発表した安全技術の導入の背景を語る。
同社はクルマやバイクに乗る人だけでなく、道を使う誰もが安全でいられる「事故に遭わない社会」を作りたいという安全スローガン「Safety for Everyone」を掲げているが、「今回技術の進化や法規制といった世の中の変化にあわせ、これまでの衝突安全を中心とした考え方から『事故ゼロ』のモビリティ社会の実現を目指すための予防安全を中心とした考え方へと進化させ、あらためてSafety for Everyoneをグローバルスローガンとして定めた」と言う。
このSafety for Everyoneを具現化する3つの柱が、「ヒト=安全教育」「テクノロジー=安全技術」「コミュニケーション=安全情報」となっており、「それぞれを進化させるとともに相互が連携することで、Safety for Everyoneを実現していきたいと考えている」と述べるとともに、「テクノロジー領域ではぶつからないクルマの技術開発の第一弾としてシティ ブレーキ アクティブ システムを用意した。ヒト領域ではテレマティクスを活用し、安全運転に必要な“気付き”を提供する安全運転コーチング、またコミュニケーション領域では地域密着で市民参加による事故のない街づくりのために、すべての交通参加者に危険情報を提供するSAFETY MAPを本日より公開する。さらに事故発生時に、通報に加えて事故データを送信することで救急活動をサポートする緊急通報システムを導入する」と、これらの技術、サービスについて紹介した。
緊急通報システム
それぞれの詳細は杉本氏が解説を行った。はじめにホンダがこれまで取り組んできた安全運転普及活動や、世界初となる屋内型全方位衝突実験施設や歩行者衝突ダミーを作ったことなどに触れるとともに、緊急通報システムについて紹介した。
緊急通報システムはインターナビ・リンク プレミアムクラブ会員を対象したサービスで、新型アコード ハイブリッドに搭載する予定。その後登場する新型車にも順次導入するとしている。
同システムはエアバッグの作動に連携しており、事故でエアバッグが作動した際に日本緊急通報サービスが運営する「HELPNET」に通報し、専門のオペレーターが通報内容に応じて消防や警察に出動を要請してくれるというもの。
高級車のみならず普通車にも提供したいとのことから、通信はインターナビとBluetooth経由で接続されるスマートフォンまたは一般的な携帯電話(フィーチャーフォン)で行われる。事故によってドライバー(および同乗者)の意識がない場合があることから、任意でHELPNETに通報する仕組みと自動で通報する仕組みを有する。スマートフォンで利用するには専用アプリをダウンロードする必要がある。アンドロインドおよびiPhoneに対応する予定。
同社の調べでは、事故があった場合に心臓停止から3分で50%、呼吸停止から10分で50%、大量出血から30分で50%の人が死に至ると言う。医療・消防関係者にインタビューしたところ、「初期治療までの時間短縮」「症状にあった医療機関に搬送し、適切な治療を施すこと」と、時間と治療の質が命を救えるかどうかに直結してくる。
そのため緊急通報システムでは、GPSの位置情報に加えて開いたエアバッグの種類(衝突方向)、何km/h減速したか、多重衝突かどうかといった内容も通報できる仕組みになっており、これによって救急隊の到着時間の短縮や、事故の重大性を判断できることで現場活動時間の迅速化やレスキュー隊が出動するかどうかの判断が短縮できる効果が期待できる。
事故の内容によって異なるものの、現状では事故が発生してから病院へ到着するまでの時間が約37分だが、緊急通報システム搭載車では現場活動の時間を短縮できることから約20分としている。
杉本氏は「緊急通報システムは、消防にて活動方針判断を行うための情報を現場到着前に提供して、救急活動をサポートする。緊急時に救急活動をサポートするとともに、お客様にはレスキューとつながっている安心感を提供することが可能になる」と、その特長について紹介した。
事故回避支援システム「シティ ブレーキ アクティブ システム」
「シティ ブレーキ アクティブ システム」は、新型フィットで搭載される予定の事故回避支援システム。サイドエアバッグやサイドカーテンエアバッグと合わせた「Safety Package」(仮称)として設定される予定。
ルームミラー部に備えられたレーザーレーダーで前方車両を認識。追突の危険性が高いと判断すると、ブザーとともにメーター内のインジケーター表示が点滅して警告し、さらにドライバーが回避行動をとらなかった場合に自動でブレーキをかける。約30km/h以下の速度域で作動するとしている。
また、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違えを判断する誤発進抑制機能も備え、踏み間違えを判断するとブザーとともにメーター内のインジケーター表示が点滅して警告を促す。さらにエンジン出力を制御して発進を抑制する。
このシティ ブレーキ アクティブ システムについて、杉本氏は「N ONE」で搭載する走行中に急ブレーキと判断すると、ブレーキランプの点灯に加えてハザードランプが自動で高速点滅し、後ろのクルマに注意を促す「エマージェンシーストップシグナル」とあわせて追突事故を減らしていきたいと述べるとともに、すでに導入済みの衝突軽減ブレーキ(CMBS)が進化したことを紹介。
この進化型衝突軽減ブレーキでは、従来は前走車にのみ対応していたところ、搭載するミリ波レーダーの精度が向上したことで対向車にも対応してブレーキが作動するようになった。
さらに衝突の危険がある場合、危険に“気付き”やすくするためにウインドシールド上を瞬間発光させる「ヘッドアップ ワーニング(HUW)」機能を搭載。また、ステアリングの反力変化で危険を知らせるとともに、ドライバーが回避操舵をした際にステアリングのアシスト力を高めて回避操舵を支援する「ステアリング制御機能」を追加している。
安全運転コーチング
安全運転コーチングは、フローティングカーデータを活用して検出された急減速が多発している信号機のない交差点に接近すると、その旨をドライバーに事前に知らせ、安全確認を促すことによって交通事故の防止を目指したもの。インターナビとスマートフォン用アプリで利用できる。
杉本氏は「コンセプトを一言で言うと『ドライバーの気付き支援』。気づきを促すために、乗車中の支援のみならず降車後の振り返り支援を用い、危険な運転と安全な運転に気づいてもらう」とし、乗車中の支援のみならず、運転後に診断結果をスマートフォンやパソコンで振り返ることができる機能を搭載していることを紹介。
危険性のある交差点に接近すると、その速度に応じて「この先、急減速多発交差点です」「この先、急減速多発交差点です。安全確認お願いします」「安全への心掛けありがとうございます」という音声アナウンスが流れる。
また、パソコンやスマートフォンで確認できる運転後の診断結果では、交差点における診断結果概要を花で表現するほか、地図上で交差点通過時の運転診断結果を確認したり、運転アドバイスを受けたりできる。
運転アドバイスは、低い順から「C」「B」「A」「S」に分かれる安全運転習得ステージに応じて内容が異なり、ステージは「減速」「加速」「速度」「左折」「右折」の5項目で目標をクリアしていくとステージが上がっていく。
SAFETY MAP
SAFETY MAPは、インターナビから収集した「急ブレーキ多発地点情報」、警察が保有する「交通事故多発地点情報」、地域住民や企業/団体から投稿される「危険スポット投稿情報」を、Web地図上(http://safetymap.jp)に掲載したサービス。3月29日に一般公開した。
急ブレーキ多発地点や事故多発エリア、歩行者や自転車が優先される生活道路の安全対策として、区域内の道路を30km/hに制限した「ゾーン30」などの情報に加え、「見通しがわるい」「飛び出しが多い」といった一般投稿された危険スポット情報を地図上に掲載している。地図上に表示される各情報をクリックするとGoogleマップのストリートビューが起動し、その地点の画像が見られるとともに投稿することもできる。
まずは埼玉県内のマップを公開し、今後、他地域への展開も検討している。