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東海大学の新型ソーラーカー、車両の内部構造を初公開
「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ 2015」に向けた走行テストは順延
(2015/8/31 18:53)
- 2015年8月30日実施
東海大学チャレンジセンター・ライトパワープロジェクト・ソーラーカーチーム(以下、東海大学ソーラーカーチーム)は8月30日、栃木県那須塩原市にあるブリヂストンのテストコース「ブリヂストンプル―ビンググラウンド」にて本格的なテスト走行に挑んだ。
チーム監督である東海大学の福田紘大准教授は、当日の課題として、予選レースを想定した低速での小旋回、本レースを想定した高速巡航、車輪ごとのブレーキバランスチェックの3点を挙げ、これらをテストコースで行う計画だったが、朝から小雨が降り続く天候で路面状況が悪化し、結局回復が見込めないことから午前の段階でテストの順延を発表。9月5日土曜日に改めて走行テストに臨む。
半分の厚みで高剛性、軽量化を果たしたカーボンモノコック
テスト走行はできなかったが、トラックで輸送してきたソーラーカーをガレージに降ろし、テストの延期発表直前まで学生らが各部のセッティング作業を進めた。ソーラーパネルを貼り付けている外装を取り外し、内部構造を明らかにしたのも今回が初めてとなった。
3輪から4輪になるなど、従来型のソーラーカーからはさまざまな部分で異なるが、最も目を引くのは、大部分がカーボン素材で構成されたモノコックを中心としたボディーワーク。このカーボン素材のモノコックは東レが素材提供と基本設計について協力を行っているものだが、東海大学チャレンジセンター所長の木村英樹教授によると、従来型の約半分となる130mm程度の厚みにしながらも、十分な剛性と軽量化を両立させているという。
一方、外装に貼り付けられたソーラーパネルはパナソニック製で、一般の住宅用として製造されているのと同じもの。ただし、「そのなかから選別した」(同教授)うえでソーラーカー用に最適化し、変換効率を23.2%に向上させている。このパネルは16ブロックに細かく分割する形で貼り付けており、コクピット部分のキャノピーやヘッドレストなどが作る影も避けられるよう配置にも工夫が施されている。
パナソニックと密に連携して開発することにより、「製品にフィードバックするかもしれない新技術」も試験的に採用しているとのことで、木村教授は他のチームにはないアドバンテージがあると強調する。なお、現在はソーラーパネルの劣化を防ぐため、上に透明の保護フィルムを被せていることから、見た目の色味は実際にはかなり異なっているとのこと。この保護フィルムによる「封印」はレース直前まで解かれることはない。
ダウンヒルバイク用ベースのKYBサスをセッティング
タイヤは大会のタイトルスポンサーでもあるブリヂストン製を初採用。オーストラリアの強い日差しのなか、3000kmという長距離を安定して走り続けるには、タイヤの完成度や信頼性が最も重要なポイントの1つとなるのは言うまでもない。
しかし、現在までにレースペースとなる90~100km/hでの走行テストを行えていないのが気がかりだ。木村教授は「本番までにできるだけテストできればと思うが、今までに高速走行で問題が出たことはないので、心配はしていない」と話すものの、一般的なタイヤと比べて極限まで軽量化が図られたソーラーカー用のタイヤは「肉薄」で、空気圧も乗用車よりはるかに高いため、パンクのリスクは通常より高くなっている。
こうした過酷な環境下に置かれるタイヤへの負担軽減には、サスペンションの役割も大きい。そのサスペンションも今回初めてとなるKYB製を採用し、8月30日のテスト日にようやく初期セッティングを行うことができた。
KYBモーターサイクルサスペンションの池上敦哉氏によると、東海大学のソーラーカーに装着するサスペンションは、元々同社がダウンヒルバイク用として開発していたものを参考にワンオフ製作したもの。高圧のタイヤが拾う路面の細かいギャップを吸収してパンクのリスクを減らし、電池のエネルギー消費の低減も目指しているという。初採用ということもあってセッティングは手探り状態だと話したが、4輪それぞれが独立しているソーラーカーをバランスよく支えるため、車重などから計算して4つのサスペンションのプリロードを調整し、高速走行の準備を整えた。
9月5日土曜日に順延となった走行テストの完了後、すぐにレースが開催されるオーストラリアへと車両が輸送される。大会期間は10月17日~24日。予選の後、ダーウィンとアデレード間の約3000kmを走破する本選が行われ、東海大学ソーラーカーチームは2011年以来の優勝を目指す。