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トヨタ、新型「カローラ」シリーズを上田チーフエンジニアが解説

TNGAとカンパニー制で“日本のカローラ”の原点に立ち返った

2019年9月17日 発売

新型「カローラ」チーフエンジニアの上田泰史氏

 トヨタ自動車は9月17日、新型セダン「カローラ」、新型ワゴン「カローラ ツーリング」を発売した。価格はカローラが193万6000円~294万8000円。カローラ ツーリングが201万3000円~299万7500円。なお、それぞれ価格は消費税10%を含むもの。

 この発売に先立ち、東京 青海にあるメガウェブで新型カローラシリーズを報道関係者向けに事前公開する車両説明会と技術説明ワークショップが開催された。本稿では新型カローラシリーズの開発を取りまとめたトヨタ自動車 MS製品企画 チーフエンジニア 上田泰史氏が車両説明会で語った内容について紹介する。

トヨタ自動車株式会社 MS製品企画 チーフエンジニア 上田泰史氏

 上田チーフエンジニアは53年前の1966年からスタートしたカローラの歴史について解説。初代モデルの主査を務めた長谷川龍雄氏が「ゆとりがある、引け目を感じない、いつまでも乗り続けたいクルマ」を目指して開発に取り組んだことを紹介。これを長谷川氏が「プラスアルファ」と呼び、歴代カローラ開発者が変わらぬ哲学として受け継いできたとした。

 カローラの開発では「良品廉価なクルマづくり」「時代のニーズに合わせた変化」という2点の大きくこだわってきたと語り、「良品廉価なクルマづくり」ではよいクルマを手に入れやすい価格で多くの人に届けて世の中に貢献し、「時代のニーズに合わせた変化」では、世界中のさまざまなユーザーニーズに徹底対応してきたと解説。カローラシリーズではセダンやワゴンだけでなく、クーペ、ミニバン、2ボックスなど多彩なボディバリエーション開発に取り組んできたこともカローラシリーズの大きな特徴とした。これによってカローラシリーズは50年以上に渡って世界中のユーザーから支持され、トヨタを代表するロングセラーカーになったと説明。現在では世界12か国・15拠点で生産が行なわれ、150か国以上で販売されて累計販売台数は4750万台以上になっているという。

 12代目となった新型カローラシリーズの開発では、「カローラの原点」に立ち返り、ユーザーの期待を超えるためにユーザーの声に耳を傾け、「スタイリング」「走り」「安心・安全」「コネクティッド」の4つに重点を置いて商品力を強化。

セダンの新型カローラ

「スタイリング」ではスポーティで1ランク上の存在感を示すことを目指し、外観デザインは「シューティング ロバスト」をテーマに開発。ダイナミックさとたくましさを合わせ持ち、低重心に感じさせるシルエットを追求。後方に向けて抜けのいいウィンドウグラフィックとしっかりと軸を通したショルダーラインで伸びやかさを強調し、4輪のフェンダーとタイヤで張り出し感を表現してワイド&ローなスタンスのよさをアピールしている。

新型「カローラ ツーリング」と上田チーフエンジニア
新型カローラ ツーリング
ルーフレールはカローラ ツーリング全車でオプション設定
新型カローラ&カローラ ツーリングの発売と合わせて一部改良した「カローラ スポーツ」

 また、パッケージングでも先代モデルから全長、全幅、ホイールベースを拡大し、全高は低く抑えてワイド&ローのシルエットを実現している。一方でグローバルで統一したプラットフォームを使いつつ、日本での使い勝手をスポイルしないようボディ寸法を日本向けに調節。カローラ ツーリングのボディサイズは4495×1745×1460mm(全長×全幅×全高。セダンの全高は1435mm)、ホイールベースは2640mmと拡大し、5ナンバーサイズから3ナンバーサイズとなっている。先代モデルから全高以外の項目は大きくなったが、タイヤの切れ角を増やすなどの対策を行ない、最小回転半径はこれまでと同等か、グレードによってはさらなる小回りを実現した。

 駐車場などでの使い勝手も向上させるため、ドアの開く角度、開口位置などを最適化し、ドアミラーの取り付け位置やドア形状も工夫して、3ナンバーボディでも従来型と変わらぬ使いやすさを実現しているという。

カローラのボディサイズは4495×1745×1435mm(全長×全幅×全高。カローラ ツーリングの全高は1435mm)、ホイールベースは2640mm
全車LEDタイプのヘッドライトを採用。薄型のシャープなデザインで軽快さをアピールする
W×BとHYBRID W×B(写真)では215/45R17タイヤとダークグレーメタリック塗装の専用アルミホイールを装着

 インテリアは「センシャス ミニマリズム」を開発テーマに設定。基本的な使い勝手を極めながらすっきりとした上質感を表現。大人らしく感性に響く1クラス上の車内空間としている。

 シンプルな水平基調のインパネにワイドなセンターコンソールを設定。構成要素の色や形状に統一感を持たせて感性品質を向上させている。また、インパネの高さを抑えてAピラーをスリム化し、ドアミラーの取り付け位置も最適化して広々と良好な視界を実現している。

カローラのインパネ。水平基調で横方向の広さ感を演出。7インチの画面を持つディスプレイオーディオは全車標準装備
中央に7.0インチTFTカラーマルチインフォメーションディスプレイ、両サイドにオプティトロンメーターを備えるコンビメーターはW×BとHYBRID W×B(写真)で標準装着
カローラのインテリア。シートはW×BとHYBRID W×Bに標準装備となる合成皮革+レザレックの「スポーティシート」で、ホワイトのシートカラーはオプション
カローラ ツーリングのインテリア。シートはW×BとHYBRID W×Bに標準装備となる合成皮革+レザレックの「スポーティシート」。シートカラーは標準仕様のブラック
カローラのトランク
カローラ ツーリングのラゲッジスペース
カローラ スポーツのインテリア。シートはG“Z”とHYBRID “Z”に標準装備となる本革+ウルトラスウェードの「スポーツシート」で、シートカラーはオプションのセンシャルレッド

「走り」では「ずっと乗り続けたくなる気持ちのいい走り」を目指して開発。現行型「プリウス」から本格導入を開始した「TNGA(Toyota New Global Architecture)」をプラットフォームに採用して重心高を下げ、安定感のある走りを実現。高張力鋼板を多用してボディ骨格の構造見直しも行ない、従来比67%アップの高剛性ボディをベースとして、新開発したサスペンション&ショックアブソーバーを装着し、乗り心地のよさと走行安定性の両立を図った。

 また、プリウス、「C-HR」「カローラ スポーツ」で培ってきた「GA-Cプラットフォーム」による走りをさらに磨き上げ、「ドライバーの目線の動きにくさ」「旋回姿勢の決まりやすさ」「ドライバーの意図する走行ラインを正確にトレースする」といった要素を実現するため、ステアリングやサスペンションなどの最適化を実施。クルマを操る楽しさにこだわって進化させているという。

 パワートレーンでは1.8リッターの直噴自然吸気エンジンと同じく1.8リッターのハイブリッド仕様、1.2リッターの直噴ターボエンジンという3種類のエンジンをラインアップ。ハイブリッド仕様には後輪を駆動するリアモーターを備えた「E-Four」を設定し、降雪地帯でのニーズに応えた。1.2リッター直噴ターボはカローラ スポーツ同様に「iMT」を備える6速MTとの組み合わせとなる。

直列4気筒 1.8リッターの「2ZR-FXE」型エンジンとモーターを組み合わせるハイブリッドモデルのパワートレーン。トランスミッションは電気式無段変速機となる
シフトセレクターの前方に「EV MODE」と「DRIVE MODE」のセレクターを配置
ハイブリッドモデルのペダル類
直列4気筒 1.2リッター直噴ターボ「8NR-FTS」型エンジンは最高出力85kW(116PS)/5200-5600rpm、最大トルク185Nm(18.9kgfm)/1500-4000rpmを発生。「iMT」を備える6速MTと組み合わせる

「安心・安全」では、入力荷重を複数の経路に分散して吸収する「マルチロードパス構造」をはじめ、「ボディ環状構造」の採用、「超高張力鋼板」の有効活用をボディに採用し、万が一の事故発生時に被害を軽減する高い衝突安全性能を確立。

 予防安全性能を高めるため、新予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense(トヨタ セーフティ センス)」を全車で標準装備。すでに販売中のカローラ スポーツが同様の装備で予防安全性能評価の最高評価となる「ASV+++」を獲得しており、さらに最新の予防安全装備として、駐車場などの低速走行時の安全性を高める「パーキングブレーキサポート」、後退時に左右後方から接近してくる車両などを検知して警告音や自動ブレーキの作動などを行なう「リヤクロストラフィックオートブレーキ」などを搭載している。

「Toyota Safety Sense(トヨタ セーフティ センス)」はフロントウィンドウの単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせて使用する

「コネクティッド」に対応するため、新型カローラシリーズでは全車に次世代車載通信機のDCM(Data Communication Module)を標準装備。「社会とつながる」「ドライバーとつながる」「スマホとつながる」という3種類のコネクティッド機能により、豊かで安心・安全、便利なカーライフをサポートする。

「社会とつながる」では、災害時の移動をサポートする「通れた道マップ」、安全運転スコアによってユーザーの保険料を割り引きしたりする「つながるクルマの保険プラン」などを用意。車両のビッグデータを社会や暮らしのために活用する。

「ドライバーとつながる」では、事故や急病、事故、車両トラブルなどの緊急時にドライバーをサポートする「ヘルプネット」や「eケア」といった安心・安全向けのサービスに加え、カーナビの目的地設定などをサポートする「オペレーターサービス」、地図を自動更新する「マップオンデマンド」などによってカーライフをサポート。

 また、スマートフォンアプリとも連動し、離れた場所からクルマの駐車位置を探せる「カーファインダー」、ドアの開閉や施錠状態、ライトのON/OFFなどをチェック・変更できる「リモート確認」などを利用できる。

 さらに「スマホとつながる」機能では、国内販売のトヨタ車で初めての試みとして、全車で標準装備する「ディスプレイオーディオ」に「スマホ連携機能」を搭載。スマホで使っている地図アプリや音楽ソースなどをディスプレイオーディオでも利用可能で、トヨタ車ならではの機能として「SDL(スマートデバイスリンク)」を標準搭載。SDL搭載のスマホアプリを自由にディスプレイオーディオ上で利用できる。この1例として、9月5日から提供が開始されたLINEの「LINE カーナビ」との連携が紹介され、カーナビ機能だけでなく、LINEのAI(人工知能)アシスタント「Clova」による音声操作、メッセージ機能なども利用できる。なお、「Apple CarPlay」「Android Auto」との連携はオプション設定となる。

ディスプレイオーディオは「LINE カーナビ」のほか、SDLに対応する「TCスマホナビ」「カーナビタイム」「au うたパス」「radiko auto」なども利用可能
無線充電規格「qi」対応の「おくだけ充電」は一部グレードにオプション設定

 こうした4点を中心とした商品力強化を解説した後、上田チーフエンジニアは「日本のカローラとして日本のお客さまの期待に応え、カローラ、カローラ ツーリング、カローラ スポーツのラインアップで幅広いお客さまの利用シーンに対応しております。トヨタ自動車はTNGAと“お客さま目線でのクルマづくり”にこだわるカンパニー制という両輪を軸に、『もっといいクルマ』づくりの競争力を磨き続けています」。

「新型カローラの開発にあたっては、新しいカンパニー制の下で企画から製品開発、生産技術、工場がワンチームになり、日本のお客さまが求める価値に徹底的に寄り添ったクルマ作りに取り組みました。現地現物でのリアルなもの作りにこだわり、商品の競争力を高める努力を重ねてまいりました。あらためて“日本のカローラ”として原点に立ち返り、良品廉価と時流に合った新技術・装備の普及。この2つで魅力ある新しいカローラとして生まれ変わったカローラ、カローラ ツーリングを、カローラ スポーツと合わせてよろしくお願いいたします」と総括した。