ニュース

ホンダF1 田辺TD「残り3戦ミスなく戦うことが大事」 メルセデスとハミルトン選手の速さに完敗したF1サンパウロGP

2021年11月12日~14日(現地時間) 開催

まさに死闘と呼ばれるトップ争いを繰り広げたマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)とルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)

 F1 第19戦 サンパウロGPは、10番グリッドから激しい追い上げをみせたメルセデスのルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)が大逆転で優勝を遂げたレースとなった。レッドブル・ホンダの2台は2番グリッドからスタートしたマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)が2位、4番グリッドからスタートしたセルジオ・ペレス選手(11号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)が4位とスプリント予選の順位そのままでゴールすることになった。なお、ハミルトン選手のチームメイトであるバルテリ・ボッタス選手(77号車 メルセデス)は3位。

F1第19戦サンパウロGP、メルセデスのハミルトンが優勝 レッドブル・ホンダのフェルスタッペンは2位

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1366221.html

 こうした結果から、注目のチャンピオンシップ争いは、ドライバー選手権はフェルスタッペン選手が332.5ポイントとなり、2位のハミルトン選手の318.5ポイントに14ポイント差をつけて首位を維持。コンストラクター選手権では首位のメルセデスが512.5、レッドブル・ホンダが11ポイント差の510.5と、いずれの選手権でも首位と2位の差は小さく、残り3戦(来週のカタールGP、12月のサウジアラビアGP、アブダビGP)も激しい戦いが繰り広げられそうだ。

 レース終了後には、ホンダF1テクニカルディレクターの田辺豊治氏によるオンライン会見が行なわれたので、その模様をお伝えしていきたい。

メルセデスとハミルトン選手の速さに完敗で、非常に大きな1敗。残り3戦ミスなく戦うことが大事

アルファタウリのピエール・ガスリー選手は7位入賞

──それでは田辺TDより本日のレースの振り返りをお願いしたい。

田辺氏:サンパウロGPの決勝レースでは、昨日の予選よりも順位を落としてしまったスプリントレースだったが、今日の決勝レースではスタート時点の出だしはよく、フェルスタッペン選手とペレス選手の1-2でレースが開始した。しかし、昨日のスプリント予選でもそうだったが、レースの中盤以降はとにかくメルセデスのルイス・ハミルトン選手が速く、力負けしてしまったレースになった。その中でも最高の形で結果を引き出し、フェルスタッペン選手が2位となった。ペレス選手はボッタス選手がピットインするタイミングでVSC(バーチャルセーフティカー)が出てしまい不運にも逆転されてしまった。振り返ると総じてメルセデスとハミルトン選手が速いというレースになった。

セルジオ・ペレス選手

 アルファタウリは最後にピエール・ガスリー選手がコンストラクター選手権で直接争っているアルピーヌの2台をパスして7位になり、昨日のスプリントレースで順位を落としてしまったのは残念だったが最大限の結果を残せたと思う。角田裕毅選手は接触して後退して、さらに接触によるペナルティー10秒を科せられて15位で完走となった。この3日間で徐々に調子を上げてきて、中盤以降はそれなりのペースで走れていた。

 普段から言っているとおり、4台完走4台入賞を目指しているが、今回は4台完走3台入賞という結果で、メルセデスにやられたレースとなった。

──今回のレースを振り返ると、メルセデスというかハミルトン選手にやられたレースになっていた。ハミルトン選手はICEを替えているが、今回調子がいいのはその影響だと分析しているか?

田辺氏:メルセデスのトト・ウルフ代表自身が「自分たちのICEは距離を重ねると劣化が激しいので新しいのを入れた」とおっしゃっていたが、そのとおりの状況だったと言える。実際に馬力が回復しており、元々メルセデスはストレートが速いクルマだが、昨日のスプリント予選は驚異的な速さだった。その意味では予想どおりの展開でもあり、予選タイム取り消し、5グリッド降格などのハンディを克服しての優勝ということで非常に強かったという印象だ。

──今シーズンの残りレース、ホンダ・パワーユニット勢は今の持ちパワーユニットでいけるか? フレッシュエンジンの効果を見せられてどうか?

田辺氏:メルセデスのICEと、われわれのICEは距離に対しての劣化度合いは違う。彼らの結果を見て何かをするかというと、何もしない。

──2年前はここで1-2フィニッシュだったが、今回はここでやられてしまった。これは22分の1のダメージにすぎないのか、それとももっと大きなダメージなのか?

何周にもわたって2人のレースは展開された

田辺氏:22戦分の1は22戦分の1だ。ただ、現在フェルスタッペン選手がドライバー選手権を、レッドブルがコンストラクター選手権を争っていることを考えると、1戦1戦が取り返しつかない状況にあるので、非常に大きな1敗だと捉えている。

──今回メキシコからの輸送で荷物の到着が遅れたが、どのくらいイレギュラーな影響があったのか?

田辺氏:現場に荷物が届いてから開けて、パワーユニットを出して、車体を出して、パワーユニットをメンテナンスして取り付けてということをやったが朝までかかったというほどではなかった。2チームそれぞれ大変だったかと言われれば大変だったが、死んだかと言われれば死ぬほどではなかった。

 今回普通に欧州でやっている連戦のスケジュールに比較すると1日遅れになってしまい、やるべきことはすべてやると時間が押してしまった。その意味では非常に大変だったという表現になる。

──次戦のカタールGPは初めてのサーキットになる。その対処方がどうなるか?

田辺氏:初めてのサーキットということで得意不得意という過去の歴史がない。チームとしては車体もパワーユニットも現在得られている情報からそこに向けて準備を進めていく。現場に入ってから最大限対処できるように、ポケットにこういう場合もあるよねというのを入れて持って行き、FP1、FP2、FP3の中でしっかり進めていくことが大事だ。

──残り3戦で残り2つが初開催、2つのタイトルに向けて何が必要になるのか? これだけはしてはいけないということは何か?

田辺氏:初めてのサーキットでは、持っている情報の中からシミュレーションをして、想定を多くして備えることが大事だ。しちゃいけないのはミスで、クルマを止めてしまうミスやセッションを失うミスは無くさないといけない。そうしたミスをなく戦うことが残り3戦で重要だ。

──次のカタールに向けて持てるデータを使ってという話だが、カタールGPはMotoGPでも行なわれており、HRCから情報共有はあるのか?

田辺氏:一般論として双方向で情報のやりとりはある。しかし、シミュレーションをやる上で重要なのはコースデータになる。そのあたりはわれわれの方でシェアされているモノがあるので、特に問題はなかった。ただ、例えばこの間のオースティン(アメリカGP)でも、彼ら(MotoGP)が先にやって、われわれ(F1)の方が後だったので、普通の状態では出てこないようなコースの特異情報などはもらったりしている。

表彰台でトロフィーを受け取るマックス・フェルスタッペン選手


 田辺氏も会見で話していたように、今回のレースは新しいフレッシュなICEを投入したメルセデスとハミルトン選手の組み合わせに、フェルスタッペン選手は最大限抵抗したものの、なすすべはなかったというのが正しい評価だろう。その意味で、レッドブル・ホンダ陣営としては厳しく受け止めざるを得ないという状況には違いない。フェルスタッペン選手のドライバー選手権でのリードは19ポイントから5ポイント減って14ポイントになり、1ポイント差だったメルセデスとレッドブル・ホンダのコンストラクター選手権のポイント差も11ポイントに開いてしまった。

 その意味では残った3戦の戦いが従前よりも重要になったことは間違いない。次戦カタールGP、そして12月のサウジアラビアGP、アブダビGPと、F1は中東での3戦で熾烈なチャンピオン争いに決着がつくことになる。その意味で、今週末にカタールのロサイル・インターナショナル・サーキットで行なわれるカタールGPは文字通り「天王山」のレースになる可能性が高く、要注目になりそうだ。