インプレッション

今春導入予定のフォルクスワーゲン「ポロ」の走りをアウトバーンで体感(海外試乗)

雨天の160km/h巡行で静粛性の高さと素晴らしい直進性に驚く

 フォルクスワーゲンの「ポロ」がまもなくフルモデルチェンジして上陸する。2017年12月、上陸直前の新型ポロにフォルクスワーゲン本社工場のあるドイツ ウォルスブルグ近郊で試乗してきたので、そのレポートをお届けしよう。

 この試乗は、ボクが選考委員を務めるWCOTY(ワールドカー・オブ・ザ・イヤー)のレポートのために実現したもの。第一印象は、「ゴルフ」の出で立ちに似たデザインだね、というのがホンネです。もう、完全にゴルフの弟分。だから、これまでよりも精悍な印象。特に顔立ちはキリッと締まって見える。ただし、予想通り横幅が広い。現行モデル+69mmの1751mm。そう、これまで日本で重宝されてきた5ナンバー枠ではなさそう。3ナンバー確定だ。そのおかげで一気に大きくなり、室内スペースにかなりゆとりができてきた。特にホイールベースが92mm延びたことで後席にも明らかにゆとりが感じられる。ラゲッジスペース容量は25%増加して351L(+71L)に拡大しているのだ。

試乗車のボディサイズは4053×1751×1446mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2548mm

 では、車両寸法を現行モデルからの+/-を表示してお知らせしよう。全長4053mm(+81mm)、全幅1751mm(+69mm)、全高1446mm(-7mm)、ホイールベース2548mm(+92mm)。これはかつての“ゴルフ IV”と同じくらいの大きさという感じ。注目なのはホイールベースが92mm延びているのに、全長は+81mmと増加が少ない。つまり、それだけ前後のオーバーハングが詰められているということ。トレッド幅もフロント1525mm(+62mm)、リア1505mm(+49mm)となり、かなりどっしりとした落ち着きのある印象になっている。新型ポロのプラットフォームは、上位モデルのゴルフや「アルテオン」「パサート」「ティグアン」と同じ「MQB」と呼ばれるフォルクスワーゲン最新のプラットフォームを基に進化した、新しいコンパクトモデル用の「MQB AO」だ。

 ボディ剛性はこれまでの1400Nm/°から1800Nm/°を超えるまでに強固になったことで、ユーロNCAPのフロントクラッシュ、サイドクラッシュ、ピラーといった過酷な衝突テストで高い成績を出しているとのこと。また、大きくなっても車両重量がほとんど増えていないなかでこの衝突テストの結果はかなり評価できるもの。インテリアも現行ゴルフの流れをくんでおり、視認性がよく安全なディスプレイを装着するなどこれまでよりもドライバーを重視した設計になっている。

室内静粛性が高く、直進性が素晴らしい

 試乗したモデルはメーターディスプレイがアナログだったが、オプションでフルスクリーンのアクティブインフォディスプレイ(133dpi:1280×480ピクセル)がチョイスできるとのこと。日本に導入されるモデルは初めからこちらかも? ナビ画面も表示するインフォテイメントシステムは8インチのタッチ式カラーディスプレイだ。流行りのコネクテッド機能では、これまで通り「App Connect」を踏襲している。新たに「We by Volkswagen」というサービスに対応するようになったのだが、こちら日本は対象外。“残念!”と、波田陽区風(古い!)。

 では、走り出そう。試乗車は3気筒1.0リッター直噴ターボのTSI。日本で最もポピュラーになりそうな予感のモデルだ。トランスミッションは7速DSG。アイドリング時などは3気筒独特の振動感がやや伝わってくるものの、信号待ちなどで停車するとほとんどアイドリングストップするので気になることも少ない。発進加速もとてもスムーズで、エンジン回転が1000rpmを超えてしまえば4気筒エンジンと変わらないくらいのスムーズさで加速する。

 まず最初に感じるのは、ステアリングフィールが格段に進歩していること。市街地モードの速度域でも直進時にステアリングがしっかりと座っている。つまり、路面のアンギュレーションに過敏に反応せず、チョロチョロした浮いた感じがしないのだ。安心感が高く、このフィーリングは高速道路でも変わらない。サスペンションはフロントにアンチロールバーを備えたストラット式、リアは左右が繋がったトーションビーム式だ。そのサスペンションの動きがとてもスムーズで、乗り心地が格段に進歩している。

 しかし、コーナリングで攻めてみるとロールはそれほど大きくならず、安定方向のセットアップ。特に、高速道路のジャンクションなどではとても安定したコーナリングだ。リアサスペンションのしっかり感が安心感を与えてくれている。驚いたのは、アウトバーン速度無制限の区間を、雨の中で160km/h巡行したときのこと。風切り音を含めた室内静粛性が高く、直進性が素晴らしいことがとても印象に残っている。やはり、ホイールベースの延長と新しいプラットフォームの剛性を強く感じた瞬間だった。

 安全装備類では、いわゆる半自動運転に準ずる上位モデルのものをほとんど継承していて、ないのは車線内中央維持の「レーンキープアシスト」ぐらい。ただし、車線からはみ出しそうになった時は警告を与えてくれる。この点は、本田技研工業の「フィット」がホンダセンシング導入でレーンキープアシストを採用していることを考慮すると、ゴルフと同じ制御にしてもよかったのでは?と感じるのだが、コスト上昇につながるので不採用としたとみるのが妥当だろう。ただし、駐車支援システムの「Park Assist」が装備されているので、高齢者や主婦層にもしっかりアピールできるだろう。

 ドイツは一般道でも100km/h制限の場所もあり、速度域が高い国柄。さらに、今試乗会でも走行したアウトバーンがある。そこで生まれた新型ポロは、このクラスのハードルを一気に上げそうな予感がする。格上のゴルフに近づいた静粛性や安定性は、これまでのポロとは一線を画すものだ。日本では経験できないアウトバーン・速度無制限区域での160km/h巡行。1.0リッター 3気筒ターボエンジンは中低速重視のトルクフィールだが、高速域でもストレスを感じさせない。しかも夜の雨というコンディションのなか、安心感の高い直進安定性とコーナリングのしっかり感はこのクラスではありえなかったレベル。日本市場での反応が楽しみだ。

松田秀士

高知県出身・大阪育ち。INDY500やニュル24時間など海外レースの経験が豊富で、SUPER GTでは100戦以上の出場経験者に与えられるグレーテッドドライバー。現在63歳で現役プロレーサー最高齢。自身が提唱する「スローエイジング」によってドライビングとメカニズムへの分析能力は進化し続けている。この経験を生かしスポーツカーからEVまで幅広い知識を元に、ドライビングに至るまで分かりやすい文章表現を目指している。日本カーオブザイヤー/ワールドカーオブザイヤー選考委員。レースカードライバー。僧侶

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