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三菱ふそう、LEDヘッドライトでフェイスリフトした大型観光バス「エアロクィーン」「エアロエース」発表会

「ドライバー異常時対応システム」の後付装着についても言及

2019年2月21日 開催

2019年型大型観光バス「エアロクィーン」の前に立つ、三菱ふそうトラック・バス株式会社 代表取締役会長の松永和夫氏(左)と同バス事業本部長の高羅克人氏(右)

 三菱ふそうトラック・バスは2月21日、2019年型モデルの大型観光バス「エアロクィーン」「エアロエース」を発表した。発売は4月。LEDヘッドライトを搭載してフェイスリフトしたほか、左側方の巻き込み事故対策や、ドライバーの異常時に乗客が押せる緊急停止ボタンを装備した。

フェイスリフトと安全装備追加の2019年型

 スーパーハイデッカータイプの「エアロクィーン」、ハイデッカータイプの「エアロエース」は、2017年に登場した「17年型」から8速AMTや軽量エンジン「6S10型」の搭載を全車で始め、ドライバーモニター機能、衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報装置を搭載している。

 今回発表の「19年型」ではフェイスリフトのほか、左側方を監視して事故防止する「アクティブ・サイドガード・アシスト」や、ドライバーが急病など異常発生時にドライバーまたは乗客が非常ボタンを押すことで緊急停止する「ドライバー異常時対応システム(EDSS)」を標準装備する。

 アクティブ・サイドガード・アシストの搭載は国内大型観光バスでは初。ドライバー異常時対応システム(EDSS)は乗客用の非常ボタンを押すと、3.2秒間警告を発した後に、0.25Gで減速して停車する。

 また、安全装備では衝突被害軽減ブレーキをバージョンアップし、歩行者検知機能を追加した「ABA4(アクティブ・ブレーキ・アシスト4)」としたほか、テレマティックスデバイス「バスコネクト」を搭載。事故時に燃料の拡散を防止する火災延焼防止装置も搭載しており、これらはいずれも標準装備となる。

 フェイスリフトではLEDヘッドライトとLEDフォグランプを標準装備したほか、三菱ふそうの「ふそうブラックベルト」デザインを採用した。すでにマイクロバス「ローザ」にも採用しているもので、三菱ふそうのブランドアイデンティティを示すという。

 価格は、エアロクィーンのPremium Line 11列シート床下直冷で4920万2000円、エアロエースのPremium Line 12列シート天井直冷で4681万円。

「19年型」の「エアロクィーン」「エアロエース」の特徴
「アクティブ・サイドガード・アシスト」
「ドライバー異常時対応システム(EDSS)」
「バスコネクト」
運転席にアクティブ・サイドガード・アシストのランプや、非常停止ボタンがある
客室にある乗客用の非常停止ボタン

ダイムラーの「CASE」は商用車が先に具現化

 神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催された発表会では、三菱ふそうトラック・バス 代表取締役会長の松永和夫氏が最初にあいさつに立った。松永氏はダイムラーグループが掲げる「CASE」を挙げ、三菱ふそうがそれに沿って活動しているという現在の状況を説明した。

三菱ふそうトラック・バス株式会社 代表取締役会長の松永和夫氏

 CASEのうち「C」はコネクティビティで、今回発表のエアロクィーンとエアロエースではバスコネクトを搭載するほか、トラックでも「トラックコネクト」の搭載が進んでいる。「A」の自動運転については、自動運転レベル2のトラックを発売する予定とした。

「S」については、「シェア&エコノミーのSですが、バスでは安全性のSでなければならない。最高水準の安全性能を装備した」と強調。最後の「E」についてはすでに電動トラックの「e-CANTER」を発売しており、「地球温暖化対策のパリ合意、この長期目標実現のための、いわば日本の橋頭堡になると自負している」と自信を見せた。

 松永氏はCASEについて「乗用車よりも商用車でより早く具現化する可能性がある」としたほか、「CASEのチャレンジをチャンスに換えていく可能性がある」とした。

実際の事故に対応する安全装備を備えている

三菱ふそうトラック・バス株式会社 バス事業本部長の高羅克人氏

 続いて、三菱ふそうトラック・バスのバス事業本部長 高羅克人氏が、三菱ふそう独自調べによる事故発生状況を示し、エアロクィーンとエアロエースでその対策が進んでいることを説明した。

 高羅氏は「最も事故が多いのは高速道路の追突。低速になるとさらに確率が上がる。車間距離保持機能付オートクルーズの『プロキシミティー・コントロール・アシスト』は0km/hまでの操作が可能で、有効性、安全性を高めている」と述べたほか、死亡事故は交差点にリスクがあるとし、右折時の横断歩道は新搭載の衝突被害軽減ブレーキ ABA4が歩行者を認識。左折時はアクティブ・サイドガード・アシストが役立つとした。

 また、バスコネクトについては、業務の効率化、不具合の即座な検知で車両稼働の効率性を高めることに寄与できるとした。

 さらに高羅氏はフェイスリフトについても言及。「LED化に伴って、三菱ふそうの伝統的なデザインコンセプトを踏襲しながらも、もう少し洗練されたシャープなイメージの顔に仕上がった」とし、「日ごろ、バスにご乗車いただくお客さまに、三菱ふそうの伝統を感じていただき、さらに、安心安全の次世代の顔はこれであると広めていきたい」と希望を述べた。

 今後の販売見通しについては、4月の発売から12月までに600台~650台をユーザーに収めるとした。実際の価格は個々の取引なので非公表としながらも、安全装備などを追加した分は価格にある程度反映したいとし、公表している価格では40万円~60万円程度アップしていると説明した。

 また、すでに使用中の車両の安全装備の後付は「ドライバー異常時対応システムについては、近々ではないが、時期をみながら対策を考えていきたい」と検討中であることを示し、アクティブ・サイドガード・アシストは後付けできないとした。

三菱ふそうトラック・バス株式会社 バス開発部長の伊藤貴之氏

 バス開発部長の伊藤貴之氏は新型の変更点を解説。安全装備の搭載のほか、「J-OBD2」を法規に対して約半年先取りして搭載したこと、ユーザーからの強い要望があったという均等スパンのトランクルームの採用などを説明した。

2019年型大型観光バス「エアロクィーン」「エアロエース」を展示

 発表会ではエアロクィーン、エアロエースの実車展示も行なわれた。スーパーハイデッカーのエアロクィーンの展示車は観光・貸切 一般仕様でグレードが「PRO Line」、ハイデッカーのエアロエースの展示車も観光・貸切 一般仕様でグレードが「PRO Line」だが、車いす用のエレベーター付きとなっている。

スーパーハイデッカー「エアロクィーン」観光・貸切 一般仕様でグレードは「PRO Line」
フロントマスクではヘッドライトが変わっているが、フロントウインドウ形状は従来と同じだという。ナンバープレートが左に寄っているのは、中央に前方を監視するミリ波レーダーがあるため
LEDヘッドライトを全車で採用
スモールランプの点灯状態
衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報装置のカメラ
左後輪前にあるミリ波レーダーはアクティブ・サイドガード・アシスト用
上下2つで前方から後方までカバーする
運転席にあるアクティブ・サイドガード・アシストの警告ランプ。左側に歩行者がいると黄色く点灯
表示モードを切り替えておくと、メーターパネル内にもアクティブ・サイドガード・アシストの警告を表示
客室左側の乗客用非常ボタン
客室右側の乗客用非常ボタン
運転席のドライバー用非常ボタンを押すと即時に停止動作に入る。乗客用非常ボタンが押された場合、3.2秒以内ならここで解除できる
新たな安全装備のスイッチや警告ランプは運転席の左側に集中配置
エアロクィーンの運転席
エアロクィーンの客室
ハイデッカー「エアロエース」観光・貸切 一般仕様でグレードは「PRO Line」。車いす用のエレベーター付き。同じくフロントマスクを変更している
エアロエースの運転席
車いす用のエレベーター付きもカタログモデルとなる。これはエアロエースのみで、エアロクィーンには設定されない
エレベーターの許容重量は230kg。60秒で上下に移動する
車いす1脚仕様はシートを前方にスライドさせて車いすスペースを作る

 発表会ではひと足先に「ふそうブラックベルト」デザインを採用した。マイクロバス「ローザ」も展示された。

マイクロバス「ローザ」観光仕様 ロングボディ 観音扉車。定員はドライバー込みで15名とゆったりしている
車両後方に観音扉を装備する
ローザの運転席
ローザの座席