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【ル・マン24時間 2019】レース後記者会見、中嶋一貴選手は「WECタイトルを獲得できてほっとしている」

小林可夢偉選手は「これも人生、これもレース。来年こそ勝つ」

2019年6月15日15時~16日15時(現地時間)

2019年6月15日22時~16日22時(日本時間)

優勝した8号車 Toyota TS050 HYBRIDのクルー。左からセバスチャン・ブエミ選手、フェルナンド・アロンソ選手、中嶋一貴選手

 23時間の時点までレースを支配した7号車 Toyota TS050 HYBRID(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組、MI)が2度のタイヤトラブルに見舞われ、最後の1時間を前にして首位から陥落という劇的な幕切れになった第87回ル・マン24時間レース(関連記事:中嶋一貴組のトヨタ8号車がル・マン24時間レースを2連覇)。

 2016年の残り数分での劇的な逆転劇と同様に、レースはチェッカーを受けるまで結果は分からないというレースの「いろはのい」を確認させてくれたレースでもあった。

 レース終了後には、総合優勝、総合2位、総合3位の各車両のドライバーが登壇しての、記者会見が行なわれた。この中で、優勝した8号車 Toyota TS050 HYBRID(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/フェルナンド・アロンソ組、MI)の中嶋一貴選手は「昨年のル・マン優勝の後目標にしてきたWECタイトルを獲れてほっとした」と述べた。また、今回のレースを最後にトヨタのWECチームを去ることになるフェルナンド・アロンソ選手は「いつ日かまたここに帰ってくるだろう」と述べ、将来的にル・マン24時間レースに復帰する可能性があることを示唆した。

 また、23時間までトップを走り、タイヤトラブルで惜しくも2位になってしまった小林可夢偉選手は「今日は(勝てなかったので)ル・マンが嫌いになった」とむしろ話を聞く方がしんみりしがちな会見に得意のジョークで笑いを起こして、「これも人生、これもレース。来年こそ勝つ」と早くも気持ちを来年のレースに切り替えていた。

2018年のル・マン初優勝の後、達成すべき目標はWECタイトルだったと中嶋一貴選手

中嶋一貴選手

──一貴、2連覇おめでとう。あなたのお父さんの中嶋悟氏がトヨタのル・マンデビューでドライブしたのが1985年、そしてその年にあなたが生まれている。それから30年以上たって、今回2勝目をマークしたのですが、その気持ちは?

中嶋一貴選手:本当にタフなレースだった。7号車のみんなの気持ちを思うと……彼らは本当に速かった。申し訳ない気持ちになるけど、僕達が何かできる訳ではないし、同じようなことは僕も経験したことがあるので、その悔しさはよく分かる。でも、今はなんて言っていいかよく分からない。

──この優勝であなたは日本人ドライバーとして初めてWECチャンピオンになった。その気持ちは?

中嶋一貴選手:昨年のル・マン24時間レースが終わったあと、チームにとっての次のターゲットはそれだった。僕にとってもタフなシーズンだったが、タイトルを獲得できて本当にほっとしている。

フェルナンド・アロンソ選手

──フェルナンド、あなたにとってはこれが最後のWECのレースになる。だけど、2つのル・マン24時間優勝にWECのタイトル、完璧じゃないか?

フェルナンド・アロンソ選手:本当に素晴らしいことだ。一貴も言っていたように、僕達はハードに仕事をこなしてきたけど、レーストラックでは7号車の方が全然速かった。それが2016年に一貴が経験したような状況がまた発生して、僕らがそれを拾った。

 とにかく今日のメインゴールはチャンピオンを獲ることだった。世界タイトルは2007年にマクラーレンと落として、フェラーリでも2010年2011年に落とした。去年から今年にかけてのスーパーシーズンではそういうことがないようにやってきて、今日は勝利と共にそれを実現することができた。本当によい日になったよ。

──フェルナンド、あなたはこれまでもレジェンドだったけど、それにさらに新しいストーリーを加えたわけだけど……。

フェルナンド・アロンソ選手:確かにWECのプログラムは次のシーズンでは予定していない。僕が何をするかのオプションはまだオープンだ。ただ、1つだけ言えることは、僕は将来このレースに帰ってくるだろうということだ。僕はこのレースを、そしてこのシリーズを、ここの雰囲気をとても愛しているのだから。

セバスチャン・ブエミ選手

──セバスチャン、ここで8回スタートして2回の優勝。そして2014年にはWECのチャンピオンになっており、今回で2回目になる。

セバスチャン・ブエミ選手:そうだね、今回のレースは非常に難しいレースになった。7号車の3人は本当にいいレースをしていて、僕達は2番手でも十分満足だったんだ。でも、予想もしないことが起きて、7号車の3人にとってはとても難しい状況になってしまった。モータースポーツでは得てしてこういうことが起きうるし、そしてそれが起きてしまったのであれば、獲りに行かないといけないのだ。

 自分達のレースとしてはすごく難しいレースだった。ここのサーキットで61台もの車両が走っており、それをかき分けながらレースをしないといけない。その中でハードにプッシュしないといけないし、ミスをすればレースを失ってしまうしね。

「これも人生、これもレース。来年こそ勝つ」と早くも気持ちを切り替えた小林可夢偉選手

ホセ・マリア・ロペス選手

──ホセ・マリア、2位でおめでとうとは言いにくい状況だけど、何が起きたのか?

ホセ・マリア・ロペス選手:まずは8号車のクルーにおめでとうを言いたい。一貴をはじめとした3人はクールなレースをしたと思う。こちらに何が起きたのかは、新しいセットのタイヤを交換してピットアウトしたら、パンクしていることが分かって交換に入ったのだが、そうしたらまたパンクしてしまった。それが起きるまでは勝てると思っていたのだけど、タイヤを交換してレースに戻ったときにはトップを取り返すには遅すぎた。

 ただ、クルマは本当に速くてチームクルーを賞賛したいと思う。素晴らしい仲間達で勝てなかったことは残念に思うが、来年こそもっとよくなっていくと信じている。

マイク・コンウェイ選手

──マイク、6回のスタートで2回の2位を入れて3つのポディウムだけど?

マイク・コンウェイ選手:別に2位を望んでいる訳じゃないんだけどね(苦笑)。言うまでもなくタフなレースだった。長い間レースを支配していたけど、運わるくパンクしてしまった。チームは本当によい仕事をしていたし、新しい車をすぐにくみ上げてくれた。そのあとはすべて順調だったけど、トラブルが発生してしまった。今は8号車におめでとうを言って、来シーズンに気持ちを切り替えていきたい。

──レース中に何か問題はあったか?

マイク・コンウェイ選手:何台かのクルマは抜くのが大変だった。予想できない動きをする車両もあって……ただそれはどのレースでも同じことだし、それもル・マン24時間レースの一部だ。

小林可夢偉選手

──可夢偉、ポールポジションをとってかなり快適に走っていたけど、残念ながら2位になってしまったけど、今の気持ちは?

小林可夢偉選手:そうだね、最初に僕が言いたいことは、今はル・マンのことが嫌いになったってことかな(苦笑)。4回スタートして、これまでも1回も勝ててない。でもセブの話を聞いたら8回スタートして2回目ってことなので、僕も次回は勝ちたいね(笑)。ベストを尽くしてハードに取り組んできたけど、23時間の段階で失うことになるなんて……。でもこれが人生だし、レースだ。次回に向けてもっと頑張るだけだ。

──そんなに大変なレースだった?

小林可夢偉選手:61台の車両というのは、まさにジャングルだよ(笑)。このジャングルで無事にゴールできただけで、2位でも十分に嬉しいよ(笑)。

──クルマはどうだったのか?

小林可夢偉選手:クルマはよかった。Q1で事故があってクルマを変えたため、セットアップなどがやり直しになって、去年のセットアップをベースにしてセットアップしていった。でも逆にそれがペースがよかった理由だったんだ。本当チームはいい仕事をしてくれていたと思う。

目標だったル・マン表彰台を獲得できて、次は総合優勝を狙いたいと3位のストフェル・バンドーン選手

3位になったストフェル・バンドーン選手、ミカエル・アレシン選手、ヴィタリー・ペトロフ選手(左から)

──ヴィタリー、ル・マンで表彰台を獲得できた感想を。

ヴィタリー・ペトロフ選手:去年のレースでは多くのメカニカル的な問題があってそれを改善してこようとチームと努力してきて良いレースができた。チームも頑張ったけど、チームメイトもいい仕事をしてくれて、それがこういう良い結果につながっていると思う。

──ミカエル、3位という結果について感想を

ミカエル・アレシン選手:本当にタフなレースだった。このプロジェクトがスタートした時にはいろいろ大変だなぁと思っていたが、それが大きく成長してこうした結果を得ることができた。こういうチャンスをくれたチームに感謝したい。来年はもっと頑張りたいね。

──ストフェル、WEC参戦2戦目で、2回目の表彰台獲得、今の感想を

ストフェル・バンドーン選手:まずはここにいる皆におめでとうを言いたい。最初のル・マン24時間レースの経験は最高だったよ。最初のスパでも表彰台を獲得して、ここでも表彰台を獲得できた。本当にタフな戦いだったけど、僕達の目標は表彰台の獲得だったので、それを実現できたのは嬉しい。次は勝利を狙いたいね。

※本文中の8号車 Toyota TS050 HYBRID(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/フェルナンド・アロンソ組、MI)のMIは、タイヤがミシュランであることを示しています。