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トヨタ、新型「ミライ」オンライン発表会で語られた魅力と期待と役割

走りでもデザインでも魅了し、水素社会実現の新たな出発点となる1台

2020年12月9日 発売

710万円~805万円

新型ミライの発表会がオンラインで行なわれた

 トヨタ自動車は12月9日、フルモデルチェンジによりすべてが一新されたFCV(燃料電池自動車)新型「MIRAI(ミライ)」の発表会をオンラインで実施した。

 まずChief Technology Officerである前田氏が登場し冒頭、10月26日の政府による所信表明演説で、製品が製造されてから廃却されるまでの全体CO2排出量と吸収量がプラスマイナスゼロになる“カーボンニュートラル”を、2050年までに達成するという政策目標「2050年 カーボンニュートラル宣言」が打ち出されたことに触れ、そのためにはCO2を出さない、減らす、回収して再利用するなど、さまざまな手法を進める必要があり、こういったサイクルを実現するためにはクリーンなエネルギーが要となり、その1つとして「水素」が重要な役割を果たすと紹介。

トヨタ自動車株式会社 Chief Technology Officer 前田晶彦氏

 そもそも水素は使用時にCO2を一切発生しないうえ、化石燃料や化学工場の副産物、下水汚泥や褐炭、水を電気分解するなど、多様な資源から作り出すことが可能。さらに、自然環境の影響を受けやすい風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーとは異なり、簡単に貯めたり運ぶことが可能で、その地域ごとに最適なサイズのエネルギー社会を構築しやすいなど、大きく3つのメリットを挙げた。

 2020年3月、福島県浪江町に太陽光発電を用いた世界最大級の水素製造施設がオープンしたことにも触れるとともに、欧州で水素への大規模投資が表明されたり、中国も既に商用車は水素を活用したモビリティが普及し、政府もカーボンニュートラルを宣言し、積極的に水素社会の構築を進めていると解説。また、こういった一連の流れは、水素が地球に優しいエネルギーであるからだと考えているという。

第2世代のFCシステムを搭載する新型ミライ

 続けて中間決算発表にて豊田社長が「いま私たちに求められているのは、地球環境も含めた人類の幸せにつながる行動を起こすこと」と発言している通り、トヨタはあくまで「人」が中心となり、HV(ハイブリッド)、PHV(プラグインハイブリッド)、EV(電気自動車)、FCV(燃料電池自動車)と、全方位での電動化戦略を進めていくと明言。

第1世代のFCシステムの展開実績
第2世代のFCシステムの展開予想

 ここで2014年に世界初の量産FCVである初代ミライを発売し、さまざまな課題の発見と解決を重ねることで多くの学びがあったと報告。また、当時からフォークリフトやバス、トラック、鉄道、船舶、産業用発電機などにFCシステムを転用していたが、初代のシステムは幅広く転用ができず、水素社会実現を加速させるほどの力がなかったという。

 そこで第2世代の新型ミライは、これまでの課題を克服するために、生産能力を約10倍に引き上げ、水素関連技術も性能向上し、社会を支えるさまざまなモビリティへの転用を前提に開発を進めてきたと明かすとともに、この流れがトヨタの役割であり「幸せの量産」にもつながると信じていると語った。

トヨタも水素バリューチェーン推進協議会に参画

 最後に、水素社会を実現させるためには「つくる」「運ぶ」「使う」のすべてのステージにおいて低コスト化が必須となり、そのために1社のみならず、各社の企業努力、産業全体の協調と連携、水素供給と需要の拡大も必要となるため、12月7日に「水素バリューチェーン推進協議会(Japan Hydrogen Association:JH2A)」へも参画したことを改めて報告。新型ミライが水素社会の「出発点」になるように尽力すると締めくくった。

ゼロエミッションを超えた「マイナスエミッション」

トヨタ自動車株式会社 Mid-size Vehicle Company チーフエンジニア 田中義和氏

 続いてバトンを渡されたのは、初代に引き続き2代目ミライの開発も担当したチーフエンジニアの田中氏。田中氏は、初代ミライは燃料電池自動車FCVの普及に向け、最初の布石を打てたと考えていると語りながらも、まだまだ不完全な部分もあったと回顧。

 そして真の水素社会を実現するべく新型ミライを開発するにあたり「お客さまが本当に欲しいと思うクルマを作ろう」と考えたと明かした。それは本質の部分を進化させ、クルマ本来の価値を高める必要があったという。そこでFCVである以前に、感性に訴える走りや際立ったスタイルなどを磨き、ユーザーが欲しいと思って選んだクルマがたまたまFCVだったと言われるものを目指したと明かす。

楽しさと一体感を両立した走り
意のままのハンドリングを実現
快適な室内

 デザイン面では、思わずすれ違った人が振り返るような魅力的なスタイリングを目指し、FRならではのスポーティなフォルム。力強いワイドな踏ん張り感と低重心を追求したフロントビューを実現。ワイド&ローな構えが際立つリアビューをたずさえ、上質なサルーンの雰囲気を漂わせながらも、スポーティさも両立させ、「FCVだから」「環境車だから」ではなく、存在感のあるスタイリングに仕上げたという。

 走りに関しても、走り出した瞬間から意のままに操れるような「自らの意志と一体感のある」上質な乗り心地を実現。直進安定性からくる安心感と、包み込まれるようなシートのホールド感により、長距離ドライブでも疲れず、気が付いたら遠くまで走っていたというくらい、ずっと運転したくなるような気持ちのいい走りをするクルマを目指したという。

従来型システム
新型システム
東京から大阪も一充填でOK
充填時間は約3分程度という

 また、新型ミライを開発するにあたり大きなテーマであったのが「航続距離」で、新開発の燃料電池による効率アップと水素搭載量を増やしたことで、一充填で約850㎞(WLTCモード)を実現。実走行でも東京から大阪まで安心してドライブできるという。また、充填時間が3分程度なので、普段使いから旅行まで安心して使えることを紹介。もちろん安全面にもぬかりはなく、他のトヨタ車と同様に、安全技術である「Toyota Safety Sense」を搭載する。

高性能な空気清浄システムを搭載
マイナスエミッションを実現

 もちろんFCVとしての付加価値をより高めたことにも言及。新型ミライは走行中に発電のために吸い込んだ空気を清浄して車外へ放出するため、CO2排出ゼロ(ゼロエミッション)を超え、「マイナスエミッション」という走れば走るほど空気をキレイにする新たな価値を創造したという。

 また、ここ数年の大型自然災害にも触れ、新型ミライも、家庭用コンセントが直接使用できる1500WのAC電源に加え、FCVならではのDC大容量給電を可能としていて、災害時に社会と生活を支える「公器」として活躍できる1台だと解説。さらに、最新の高度運転支援技術「Toyota Teammate」を採用していることに加え、さらに高精度な「Advanced Drive」を新型ミライに最初に搭載することを約束した。

 最後に、ユーザーからの問い合わせでもっとも多いという「水素の安全性」についても解説。高い強度を誇る水素タンクの搭載方法や、車両火災時の対策など、万全の策を講じていることを紹介するとともに、2014年の発売以来1件も発生していないことを報告し、安全面も万全であると締めくくった。

災害時などには給電も可能
社会・生活を支える「公器」にもなる
高い安全性能を解説
【MIRAI】新型MIRAI発表会(25分22秒)