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ホンダF1 田辺豊治テクニカルディレクター、「これまでホンダF1の活動を支えてくれた人すべてに感謝したい」

ホンダF1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏

 F1最終戦(第22戦)アブダビGPは、残り5周で導入されたセーフティカーにより大きく局面が変わり、ラスト1周のレースとして再開されレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)が、ルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)をオーバーテイクし、大逆転で優勝した。

 フェルスタッペン選手は自身初、そしてホンダパワーユニット搭載車をドライブしたドライバーとして1991年の故アイルトン・セナ以来30年ぶりにチャンピオンとなった。

ホンダF1ラストイヤーでドライバーチャンピオン獲得 F1最終戦アブダビGPでフェルスタッペンが最終ラップに大逆転優勝

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1373508.html

 チームメイトのペレス選手は、レース中にハミルトン選手を抑えるときにパワーユニットを酷使したことなどからパワーユニットにトラブルが発生し終盤リタイア。コンストラクター選手権ではメルセデスが8年連続でチャンピオンとなった。

 レース後にメルセデスチームからセーフティカー状態の解除前にフェルスタッペン選手がハミルトン選手を抜いたのではないかという件、さらにはセーフティカー状態が解除される前に周回遅れを先行させた手順が間違っていたのではないかという件に関して抗議が出されたが、いずれもレーススチュワード(レース審査委員会)により却下され、レース結果はそのまま確定した。

 レース終了後、ホンダF1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏のオンラインインタビューが行なわれたので、その模様をお届けしたい。

ホンダF1に関わったすべての関係者、応援してくれたファンなどに感謝したいと田辺TD

──それでは始めに田辺氏からレースを振り返っていただきたい。

田辺氏:ホンダF1、最後の年、最後のレース、最終ラップでマックス・フェルスタッペン選手がトップに立って優勝してくれた。メルセデスチームから抗議が出ているので、裁定がどうなるのかは結果を待つしかないが、それは置いておくとして4台完走、4台入賞、チャンピオン獲得を常に目標として掲げてきたが、今回はセルジオ・ペレス選手のパワーユニットに異常が出てしまいリタイアせざるを得なくなってしまったのは残念だった。

 また、角田裕毅選手は、今年初挑戦となるF1で出だしはよかったものの、中盤以降は苦しい時期もあった。そうした中でしっかりF1を学んで精神面なども厳しい環境にさらされて、その中で学んで成長してきた。今週末は、金土日とキッチリ組み立ててきて4位を獲得した。ガスリー選手はクルマをまとめることに苦労していたが、最後はしっかりレースをまとめてきて5位。アルファタウリ・ホンダに関してもよい形でシーズンを終えることができた。

 これまでホンダF1の活動を支えてくれた人すべてに感謝したい。今年フェルスタッペン選手がドライバーチャンピオンを獲ったが、2015年からの7年間は苦しい時代を経て今年チャンピオンシップを戦えるポジションまで来ることができたことをうれしく思う。残念ながらコンストラクター選手権は獲れなかったが、自分たちの技術を信じて勝つのだという気持ちを持って開発を続けてくれた開発陣、それを支えてくれたオペレーションやトラベルのメンバー、さらに海外にメンバーを送り出してくれたその家族のサポート、そういうことがあっての今日の結果でうれしく思っている。

 ホンダF1にこれまで関わってくれた方、またオールホンダでという話も何度かさせていただいたが、すべてのホンダの関係者、そしてレッドブルやアルファタウリのチーム関係者、FIA、FOMなどを含めてすべてのF1関係者やサポートしてくれた人たちにも感謝の気持ちを言いたい。

──最終ラップ、パワーユニットのモードはどんなモードだったのか?

田辺氏:とても興奮していたのでよく覚えていない……。いつもと一緒で路面のコンディション等を見ながら、エネマネをやっていた。無鉄砲に使うわけにはいかないので、そこはうまく使った。

──チェッカー瞬間の気持ちを教えてほしい。

田辺氏:一言で言えばうれしかった。先ほども言ったが、長年いろいろなことを経験させてもらった。そしてHRD Sakura、ミルトンキーンズ、ホンダ本社、チームメンバー、ホンダF1のアルファタウリ担当メンバーも含めて、彼ら彼女らのおかげだと思っている。彼ら彼女らに本当におめでとうと言いたい気持ちだ。

──1991年のアイルトン・セナ以来、30年ぶりのタイトルはどういう意味があるか?

田辺氏:ホンダがレースに参戦するに当たっては、いかなりカテゴリーでも1番を目指して戦っているが、F1では91年以来獲れていなかった。自分も関わっていた第3期F1(00年~08年)では、ジェンソン・バトン選手の06年ハンガリーGPの優勝が唯一で終わってしまった。

 ハイブリッド時代では、出だしこそ厳しかったが自分たちの技術の証しとしてチャンピオンを獲れたこと、応援していただいてくれた方々に応援したかいがあったなということを感じてもらえるとうれしい。

 会社としてグループとして努力することは大事で、1番を目指して本気でやったことが将来の肥やしになる。今回ドライバー選手権のタイトルは獲れ、コンストラクターは獲れていないが、毎回1番になるためにサーキットに来ていて全関係者が勝ちにこだわってやってきた。その努力とこだわりが、われわれがホンダで働いていく上で経験として役立つと考えている。それは仮に獲れていなくても役立つと思っている。

──F1参戦終了となるが、今の気持ちは?

田辺氏:HRD Sakuraのメンバーともインターコムで話してきたが、ここまでやってきて最後の最後でドライバーチャンピオンを獲った。それは1つの達成感を持っているところだ。

──レース中、ハミルトン選手はとても速く、フェルスタッペン選手のペースはそれに比べて劣っているように見えた。正直レース中にはちょっと無理かなと思っていたか?

田辺氏:いつも言っているが、レースは終わるまで何があるか分からない。終わって結果を見なければ分からない。しかし、ある程度予想はできたりするので、最終スティント、ハミルトン選手がタイヤ交換せず、フェルスタッペン選手は交換。毎ラップどれくらいつめればいいのかというのは最終ラップまでいっても難しいかもしれないというのはあったし、仮にオーバーテイクしようとすれば、ハミルトン選手も阻止する形になると思っていた。その意味では難しいかなとは思っていた。

 しかし、最後までやってみなければ分からないというのは、これまでもよい意味でもわるい意味でもあった。勝ち負けもあるけど、クルマのコンディションの確認をしながら、最後まできちんと走らせ、問題があれば迅速に対処するという形でやっていた。

──いろいろな方に感謝を述べていた。最後が重なったチャンピオンだが、できすぎな気もするが……。

田辺氏:今回チームワークの大事さを改めて感じた。それはホンダ側もそうだし、レッドブル、アルファタウリといったチーム側のチームワークもそうだ。レース中のセルジオ・ペレス選手のフェルスタッペン選手をチャンピオンにするためのチームワークもそうだ。

 15年からハイブリッド時代のF1に取り組んできて、最初はマクラーレンと一緒に苦労した。18年にトロロッソと仕事を始めてオープンマインドでクルマを速くすることに取り組んできた。それがレッドブルとのパートナーシップになり、クルマを速くするにはどうしたらいいか、設計段階やオフィス、現場で施策を回してきた。

 ドライバーも含めてチームワークをしてきたことが今日の結果に結びついたと言える。アルファタウリもフェルスタッペン選手とホンダのチャンピオンを喜んでくれていた、まさにチームワークの結果だ。

──今回のレースでパワーユニットは最後のレースになる。マイレージを攻めて使ったコンポーネントなどはあったのか?

田辺氏:特にない(笑)

──セーフティカー明けのリスタートに向けては、特別な設定などはしたのか?

田辺氏:エネマネの話で、ためるだけためて使うだけ使うとなる。

──もうちょっとやりたないという気持ちはあるか?

田辺氏:ホンダとしてのけじめとして、供給を終了する今年に、コンストラクター選手権は逃したがフェルスタッペン選手がポールポジション10回、優勝10回でドライバーチャンピンを獲得することができた。その意味で最終ラップはホンダにとってよいけじめになったと思っている。

──ホンダはもう1回F1やったほういいか?田辺氏個人としてはどう思うか?

田辺氏:会社としての方向付けとしては、今年で供給は終了となる。あくまで私個人の見解として、エンジニアの教育、メンタル、技術スキルの面で、(F1参戦は)ものすごく有益なプロジェクトだと思っている。第3期F1参戦を終えた後、F1をやっていた人が量産に散っていった。そして量産をやってきた人とレースをやってきた人が交わることでよい効果を生んできた。

 ホンダはレースを走る実験室という言い方をしているが、技術者の教育の場として使うのは素晴らしい場だと思う。エネルギーマネジメント、バッテリ、ICEの燃焼などに関しては今までのレベルから大きく踏み込んでやってきた。会社がどう判断しているか分からないが、ホンダのDNAにはレースをやって技術者を育成するということが脈々と流れており、いつの日か(戻ってくることを)願っている。

 私はこれで終わりだが、海外に出て仕事をする海外のエンジニアとせめぎ合いながら限られた時間の中で仕事をすることは有益で、ぜひ若い人にもそういう経験をしてほしいと願っている。

──ホンダがF1で頂点に立ったが、ホンダのやり方でほかと比べて長所はなんだと感じているか?

田辺氏:海外のチームと付き合ってみて、あるいはほかのパワーユニット・マニファクチャラーの話を聞いて思うのは、(海外のチームやマニファクチャラーは)仕事が細分化されており、隣の人がなにやっているのか知らない状態で仕事していることが多いということだ。担当領域は詳しいけど、専門外のことは知らないことが多い。

 それに対してホンダは全体で動いていて、お互い分かりあった上で仕事ができている。こうありたいということがあっても、最適は何か、ジェネラルにものを理解した上で、自分の得意とする領域は責任持つ。これは、自分には関係ないから知らないという言い方はしない、そういうところが強いのではないかと感じている。

ルイス・ハミルトン選手を最終ラップで逆転してチェッカーを受けるマックス・フェルスタッペン選手(提供:本田技研工業株式会社)

F1第22戦アブダビGP 決勝結果(確定)

順位号車ドライバー車両周回数タイムポイント
133マックス・フェルスタッペンレッドブル・レーシング・ホンダ581時間30分17秒34526
244ルイス・ハミルトンメルセデス58+2.256秒18
355カルロス・サインツフェラーリ58+5.173秒15
422角田裕毅アルファタウリ・ホンダ58+5.692秒12
510ピエール・ガスリーアルファタウリ・ホンダ58+6.531秒10
677バルテリ・ボッタスメルセデス58+7.463秒8
74ランド・ノリスマクラーレン・メルセデス58+59.200秒6
814フェルナンド・アロンソアルピーヌ・ルノー58+61.708秒4
931エステバン・オコンアルピーヌ・ルノー58+64.026秒2
1016シャルル・ルクレールフェラーリ58+66.057秒1
115セバスチャン・ベッテルアストンマーティン・メルセデス58+67.527秒0
123ダニエル・リカルドマクラーレン・メルセデス57+1周0
1318ランス・ストロールアストンマーティン・メルセデス57+1周0
1447ミック・シューマッハハース・フェラーリ57+1周0
1511セルジオ・ペレスレッドブル・レーシング・ホンダ55DNF0
NC6ニコラス・ラティフィウイリアムズ・メルセデス50DNF0
NC99アントニオ・ジョビナッツィアルファロメオ・レーシング・フェラーリ33DNF0
NC63ジョージ・ラッセルウイリアムズ・メルセデス26DNF0
NC7キミ・ライコネンアルファロメオ・レーシング・フェラーリ25DNF0

ドライバーランキング(F1最終戦終了後)

順位ドライバー車両ポイント
1マックス・フェルスタッペンNEDレッドブル・レーシング・ホンダ395.5
2ルイス・ハミルトンGBRメルセデス387.5
3バルテリ・ボッタスFINメルセデス226
4セルジオ・ペレスMEXレッドブル・レーシング・ホンダ190
5カルロス・サインツESPフェラーリ164.5
6ランド・ノリスGBRマクラーレン・メルセデス160
7シャルル・ルクレールMONフェラーリ159
8ダニエル・リカルドAUSマクラーレン・メルセデス115
9ピエール・ガスリーFRAアルファタウリ・ホンダ110
10フェルナンド・アロンソESPアルピーヌ・ルノー81
11エステバン・オコンFRAアルピーヌ・ルノー74
12セバスチャン・ベッテルGERアストンマーティン・メルセデス43
13ランス・ストロールCANアストンマーティン・メルセデス34
14角田裕毅JPNアルファタウリ・ホンダ32
15ジョージ・ラッセルGBRウイリアムズ・メルセデス16
16キミ・ライコネンFINアルファロメオ・レーシング・フェラーリ10
17ニコラス・ラティフィCANウイリアムズ・メルセデス7
18アントニオ・ジョビナッツィITAアルファロメオ・レーシング・フェラーリ3
19ミック・シューマッハGERハース・フェラーリ0
20ロバート・クビサPOLアルファロメオ・レーシング・フェラーリ0
21ニキータ・マゼピンRAFハース・フェラーリ0

コンストラクターランキング(F1最終戦終了後)

順位チームポイント
1メルセデス613.5
2レッドブル・レーシング・ホンダ585.5
3フェラーリ323.5
4マクラーレン・メルセデス275
5アルピーヌ・ルノー155
6アルファタウリ・ホンダ142
7アストンマーティン・メルセデス77
8ウイリアムズ・メルセデス23
9アルファロメオ・レーシング・フェラーリ13
10ハース・フェラーリ0

YouTube FORMULA 1ダイジェスト映像

トップhttps://www.youtube.com/channel/UCB_qr75-ydFVKSF9Dmo6izg
第1戦バーレーンGP https://www.youtube.com/watch?v=QuBlV0dixMo
第2戦エミリア・ロマーニャGP https://www.youtube.com/watch?v=ds0BC8RDJ5o
第3戦ポルトガルGP https://www.youtube.com/watch?v=-9-8gvYantk
第4戦スペインGP https://www.youtube.com/watch?v=HuLdJLB6sBo
第5戦モナコGP https://www.youtube.com/watch?v=GK5qm8AZ1dQ
第6戦アゼルバイジャンGP https://www.youtube.com/watch?v=suZHkUxPzjE
第7戦フランスGP https://www.youtube.com/watch?v=5hBwgJtMxLM
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第9戦オーストリアGP https://www.youtube.com/watch?v=LxLVqf5OtIE
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第20戦カタールGP https://www.youtube.com/watch?v=CZy-NZF8mEA
第21戦サウジアラビアGP https://www.youtube.com/watch?v=vRhhS6BnLSY
第22戦アブダビGP https://www.youtube.com/watch?v=7QJ-N-AQJYc