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ホンダF1 30年ぶりのチャンピオン獲得 ホンダF1山本雅史マネージングディレクター「劇的な終わり方になったが、7年間のホンダF1の集大成として気持ちよく笑顔で終えることができた」

チャンピオン獲得後オンラインインタビューに答えるホンダF1マネージングディレクター 山本雅史氏

 F1最終戦(第22戦)アブダビGPは、12月12日(現地時間)に決勝レースが行なわれ、最終盤に出されたセーフティカーが解除された直後の最終ラップで、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)がルイス・ハミルトン選手をオーバーテイクし大逆転で優勝。自身初めての、レッドブルとして2013年のセバスチャン・ベッテル選手以来の、そしてホンダ・パワーユニットを利用したドライバーとしては1991年の故アイルトン・セナ以来のドライバーチャンピオンとなった。

ホンダF1ラストイヤーでドライバーチャンピオン獲得 F1最終戦アブダビGPでフェルスタッペンが最終ラップに大逆転優勝

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1373508.html

 このレースは、2015年にマクラーレンと組んでF1に復帰して以来、F1に参戦し続けきたホンダF1のラストレースでもあり、その集大成のレースであった。紆余曲折はあったものの結果的にフェルスタッペン選手はポール・トゥ・ウインを飾り、22戦中10回のポールポジション、10回の優勝を飾り、ドライバーチャンピオンを獲得した。

 ペレス選手が記録した1勝を加えて、レッドブル・ホンダは22戦中11勝と半分を占め、メルセデスのハミルトン選手8勝+バルテリ・ボッタス選手1勝の9勝と比べても2勝多く勝っていることになる。

 そうしたホンダF1最後のレースをホンダF1マネージングディレクター 山本雅史氏がオンラインインタビューに登場し、自身がホンダのモータースポーツ部長およびホンダF1マネージングディレクターとして関わった6年間のホンダF1を振り返った。

一番つらかった時期は2017年のバーレーンGP、今のターンアラウンドにつながったのは2018年のカナダGP

──それでは冒頭に山本氏から今日の振り返りなどを。

山本氏:多くのファンのみなさまをはじめとした応援のおかげで、ドライバーチャンピオンを獲得することができた。終盤、このままイエローで終わらないことを祈っていたが、(最後にレースをさせてくれた)マイケル(マイケル・マシ氏、F1レースディレクター)の判断には感謝したい。

 そのリスタートする前にルイスとマックスがせめぎ合っていたが、そこでマックスがファイナルラップで抜いてきてくれるだろうということが見え、マックスのすごさが見えたと言える。劇的な終わり方になったが、7年間のホンダF1の集大成として気持ちよく笑顔で終えることができたと思う。

──抜きつ抜かれつのすごいレースだった。

山本氏:さっきチェコ(セルジオ・ペレス選手)とも話してきたが、彼のルイスとのバトルは本当に感動したし、最後まで望みをつないだという意味で、ペレス選手に本当にありがとうと言ってきた。

 しかし、そこでかなりパワーユニットを使ってしまったこともあり、最後の最後で異常が出てリタイアになってしまってごめんなさいとも話してきた。

 本当に今回はチームワークで、レッドブルとアルファタウリの両チームに感謝を込めて、このTシャツに4台すべてのカーナンバーを入れた。今回フェルスタッペン選手をチャンピオンにしようという思いを、レッドブルだけでなく、アルファタウリも、ホンダも連動して持っており、それが戦えた1つの理由だと考えている。

ホンダF1マネージングディレクター 山本雅史氏がアブダビGPの会場でチャンピオン獲得後に着ていた特別Tシャツ

──山本氏がホンダのモータースポーツ部長になってから6年、浮き沈みがあるF1活動だったと思う。一番つらかったときはいつで、逆にターンアラウンドになったのはどのタイミングか?

山本氏:われわれのF1活動で最もつらかった時期は2017年のバーレーンGPだ。そのレースではMGU-Hが次々と壊れていき次部品がないぞというところまでなって、マクラーレンの首脳陣全員がうちのモーターホームにクレームつけに来たときが本当に一番つらかった。

 今だから笑って言えるが、HRD Sakuraのメンバーにも本当に申し訳ないと思ったし、あのときになんとかしないとまずいな、真っ暗の中にいるって感じだったし、そこから夏ぐらいまでが本当に厳しくて、夏休み明けにモンツアのイタリアGPに急きょ行って、マクラーレンと「協議離婚」を発表し、気持ちよく握手して別れた。

 そのときにマクラーレンからいろいろなことを学んだからこそ、今のわれわれの成功がある。今回のレースでも(その当時マクラーレン・ホンダのドライバーだった)フェルナンド・アロンソ選手がグリッドで「絶対チャンピオン獲れよ」と言ってくれたし、パルクフェルメでは「おめでとう」と言ってくれたし、マクラーレンの関係者も祝福してくれた。

 そこからはい上がったきっかけになったのは、1つにはトロロッソ(現アルファタウリ)との契約で、それを起点にしてその姉妹チームであるレッドブルとの契約をすることができたことだ。実際トロロッソとの契約時にも、チーム代表のフランツ・トスト氏から「われわれが勝つまで5年はかかるから、チャンピオンを獲るために早くレッドブルと交渉しろ」と言われていた。そして18年のバーレーンGPで、ピエール・ガスリー選手が4位に入っていけるとなり、18年のカナダGPでレッドブルのアドバイザーであるヘルムート・マルコ博士から契約交渉の話をしようというメールが来るかどうかが重要なポイントになった。

 そこでHRD Sakuraの浅木(HRD Sakura センター長 兼 F1プロジェクト LPL 浅木泰昭氏)にもお願いして、中途半端なレースをするのではなく、中段グループの中で劇的なパワーを見せつけてくれといい、実際にガスリー選手がいい走りをしてくれてそれを実現することができた。そうしたらマルコ氏からメールが来て契約交渉をしようということになり、そこからレッドブルとの契約の話になった。そのカナダGPから帰ってすぐ、経営陣とも話してオッケーをもらい、レッドブルと契約した。カナダGPから帰るとすぐに株主総会があり、そこに説明に来いと言われて経営メンバーに説明したことをよく覚えている。

 レッドブルとの初レースとなった19年のオーストラリアGPで初めての表彰台を獲り、そしてオーストリアGPでレッドブル・ホンダとして初優勝して田辺(ホンダF1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏)が表彰台に上がったことも忘れられない思い出だ。そして今シーズンはポールポジション10回、ペレス選手の1勝を入れて11勝という結果で良い戦いができたと思うし、この仕事をやらせてもらったことに感謝したい。

 そして何よりもいつもずっと応援してくれていたファンの皆さまに感謝申し上げたい。

──シーズン前には「記憶に残るシーズンにしたい」とおっしゃっていたが、それは実現できたか?

山本氏:自分としてはそう思っているが、そうかどうかはレースファンのみなさまにお聞きしてみたいところだ。

──角田裕毅選手がレースでは4位に入った。中盤戦は苦しい時期もあったが、後半は徐々に調子を上げて、今回の4位という結果を得た。角田選手の評価はどうか?

山本氏:今回のレースでの角田選手は、全セッションでピエール・ガスリー選手の前にいた。角田選手も最後のレースを迎えるにあたり本当にいい顔をしていた。昨日の予選3回目(Q3)ではいろいろあった(筆者注:トラックリミット違反で最初のタイムが抹消された)が、FP1から乗れていたし、夏休み以降、金曜日から3日間をどう組み立てていくかをずっと話してきた。そうした組み立てから、メンタルの面でも成長してきている。

 また、マルコ氏のアイデアで、アレックス・アルボン選手からアドバイスを受けたのも非常に役立っている。アルボン選手は来年ウイリアムズでライバルになるのに、親身になって角田選手に共有してくれていた。

 そして角田選手の土壇場での強さみたいなものには今年も驚かされた。昨年のF2のときにも終盤のバーレーンでの2連戦で、最初のラウンドで3位以内が確定したら、次のバーレーンではF1に乗せてしまおうかという話をマルコ氏としていた。しかし、そのレースでリタイアに終わってしまってそれはなくなるのだが、最終ラウンドでは優勝と2位と最上の結果を出し、ランキング2位に迫る結果を残した。

 今年も前半戦最後のハンガリーで6位、そして今回の最終戦でも4位とよい結果を残しており、来年につながる走りができたと評価してよいと考えている。

F1第22戦アブダビGP 決勝結果(確定)

順位号車ドライバー車両周回数タイムポイント
133マックス・フェルスタッペンレッドブル・レーシング・ホンダ581時間30分17秒34526
244ルイス・ハミルトンメルセデス58+2.256秒18
355カルロス・サインツフェラーリ58+5.173秒15
422角田裕毅アルファタウリ・ホンダ58+5.692秒12
510ピエール・ガスリーアルファタウリ・ホンダ58+6.531秒10
677バルテリ・ボッタスメルセデス58+7.463秒8
74ランド・ノリスマクラーレン・メルセデス58+59.200秒6
814フェルナンド・アロンソアルピーヌ・ルノー58+61.708秒4
931エステバン・オコンアルピーヌ・ルノー58+64.026秒2
1016シャルル・ルクレールフェラーリ58+66.057秒1
115セバスチャン・ベッテルアストンマーティン・メルセデス58+67.527秒0
123ダニエル・リカルドマクラーレン・メルセデス57+1周0
1318ランス・ストロールアストンマーティン・メルセデス57+1周0
1447ミック・シューマッハハース・フェラーリ57+1周0
1511セルジオ・ペレスレッドブル・レーシング・ホンダ55DNF0
NC6ニコラス・ラティフィウイリアムズ・メルセデス50DNF0
NC99アントニオ・ジョビナッツィアルファロメオ・レーシング・フェラーリ33DNF0
NC63ジョージ・ラッセルウイリアムズ・メルセデス26DNF0
NC7キミ・ライコネンアルファロメオ・レーシング・フェラーリ25DNF0

ドライバーランキング(F1最終戦終了後)

順位ドライバー車両ポイント
1マックス・フェルスタッペンNEDレッドブル・レーシング・ホンダ395.5
2ルイス・ハミルトンGBRメルセデス387.5
3バルテリ・ボッタスFINメルセデス226
4セルジオ・ペレスMEXレッドブル・レーシング・ホンダ190
5カルロス・サインツESPフェラーリ164.5
6ランド・ノリスGBRマクラーレン・メルセデス160
7シャルル・ルクレールMONフェラーリ159
8ダニエル・リカルドAUSマクラーレン・メルセデス115
9ピエール・ガスリーFRAアルファタウリ・ホンダ110
10フェルナンド・アロンソESPアルピーヌ・ルノー81
11エステバン・オコンFRAアルピーヌ・ルノー74
12セバスチャン・ベッテルGERアストンマーティン・メルセデス43
13ランス・ストロールCANアストンマーティン・メルセデス34
14角田裕毅JPNアルファタウリ・ホンダ32
15ジョージ・ラッセルGBRウイリアムズ・メルセデス16
16キミ・ライコネンFINアルファロメオ・レーシング・フェラーリ10
17ニコラス・ラティフィCANウイリアムズ・メルセデス7
18アントニオ・ジョビナッツィITAアルファロメオ・レーシング・フェラーリ3
19ミック・シューマッハGERハース・フェラーリ0
20ロバート・クビサPOLアルファロメオ・レーシング・フェラーリ0
21ニキータ・マゼピンRAFハース・フェラーリ0

コンストラクターランキング(F1最終戦終了後)

順位チームポイント
1メルセデス613.5
2レッドブル・レーシング・ホンダ585.5
3フェラーリ323.5
4マクラーレン・メルセデス275
5アルピーヌ・ルノー155
6アルファタウリ・ホンダ142
7アストンマーティン・メルセデス77
8ウイリアムズ・メルセデス23
9アルファロメオ・レーシング・フェラーリ13
10ハース・フェラーリ0

YouTube FORMULA 1ダイジェスト映像

トップhttps://www.youtube.com/channel/UCB_qr75-ydFVKSF9Dmo6izg
第1戦バーレーンGP https://www.youtube.com/watch?v=QuBlV0dixMo
第2戦エミリア・ロマーニャGP https://www.youtube.com/watch?v=ds0BC8RDJ5o
第3戦ポルトガルGP https://www.youtube.com/watch?v=-9-8gvYantk
第4戦スペインGP https://www.youtube.com/watch?v=HuLdJLB6sBo
第5戦モナコGP https://www.youtube.com/watch?v=GK5qm8AZ1dQ
第6戦アゼルバイジャンGP https://www.youtube.com/watch?v=suZHkUxPzjE
第7戦フランスGP https://www.youtube.com/watch?v=5hBwgJtMxLM
第8戦シュタイアーマルクGP https://www.youtube.com/watch?v=tr4gf_iae20
第9戦オーストリアGP https://www.youtube.com/watch?v=LxLVqf5OtIE
第10戦イギリスGP https://www.youtube.com/watch?v=FRt8hXFb0Vg
第11戦ハンガリーGP https://www.youtube.com/watch?v=a2kkuQS_gXk
第12戦ベルギーGP https://www.youtube.com/watch?v=MjmywbEfzk0
第13戦オランダGP https://www.youtube.com/watch?v=rXhGajRFLlY
第14戦イタリアGP https://www.youtube.com/watch?v=1ZgniFQiTPA
第15戦ロシアGP https://www.youtube.com/watch?v=Jjw1x6xQo7s
第16戦トルコGP https://www.youtube.com/watch?v=ZGRpHy0qoN4
第17戦アメリカGP https://www.youtube.com/watch?v=-Ee08uFurok
第18戦メキシコGP https://www.youtube.com/watch?v=2yYtH0HAL-U
第19戦サンパウロGP https://www.youtube.com/watch?v=icesjjvN6Sc
第20戦カタールGP https://www.youtube.com/watch?v=CZy-NZF8mEA
第21戦サウジアラビアGP https://www.youtube.com/watch?v=vRhhS6BnLSY
第22戦アブダビGP https://www.youtube.com/watch?v=7QJ-N-AQJYc