試乗インプレッション

富士スピードウェイでAMGモデルを堪能! 「C 63 S」「CLS 53」を全開で走行

ドライブフィールが洗練されたC 63 S、4MATIC+で高い操縦安定性を見せたCLS 53

パナメリカーナグリルで一目瞭然

 2018年のF1でも圧倒的な強さを見せ、5年連続のダブル・タイトルをほぼ確実に手中に収めたタイミングで、メルセデスAMGが手がけた最新モデル2台を、富士スピードウェイのレーシングコースで全開で走らせることができるという願ってもない機会に恵まれた。

 まずは少しおさらいすると、新しい呼称もだいぶ定着してきたように思えるメルセデスAMGのラインアップには、機種によって「65」「63」「53」「45」「43」といったシリーズが設定されている。

 65シリーズは一部の上級機種にしか設定のない、V12エンジンを搭載する最上級モデルとなり、63シリーズは本格的なサーキット走行も視野に入れたトップパフォーマンスモデルとして多くの機種に設定されており、いずれも4.0リッターV8エンジンを搭載する。

 そして新たに加わった53シリーズと、ひと足早く登場した43シリーズは、日常的に使える快適性とスポーツ走行にも対応する走りを兼ね備えた位置付けで、ともに排気量は3.0リッターの直6とV6を搭載し、可変トルク配分を行なう「AMG 4MATIC+」が組み合わされる。

 一方、前輪駆動ベースの4MATICを搭載するコンパクトクラスには世界最強の2.0リッター直4エンジンを積む既存の45シリーズに加えて、新たに弟分の35シリーズが加わることが明らかにされたばかりだ。

富士スピードウェイで最新の「C 63 S」「CLS 53」に乗ってきました!

 今回ドライブしたのは、マイナーチェンジしたCクラス「C 63」のさらなる高性能版である「C 63 S」と、登場して間もないCLSの現時点での最上級モデルとなる「CLS 53 4MATIC+」だ。

 C 63 Sは新旧を乗り比べることもできた。新型には最近メルセデスAMGモデルで採用が増えている「AMGパナメリカーナグリル」が与えられており、新旧の識別は一目瞭然。コックピットでは最新のAMGデザインのステアリングホイールが与えられ、手を離さずに走行モードを選択できる「AMGドライブコントロールスイッチ」がSモデルに装備されたのも新しい。加えてシートも刷新された。

 また、エンジン自体に変更はないが、トルコンの代わりに湿式多板クラッチを配した「AMGスピードシフトMCT」が7速から9速になった。

7月のCクラスマイナーチェンジに合わせて登場した新型「メルセデスAMG C 63 S」(1407万円)。ボディサイズは4757×1839×1426mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2840mm。トランスミッションに新たに9速の「AMGスピードシフトMCT」を採用したのが新しい
エクステリアではクロームメッキを施した12本の垂直フィンからなる「AMGパナメリカーナグリル」を新採用。試乗車はSモデルにオプション設定される「AMGパフォーマンスパッケージ」(90万円)を装着し、「AMGカーボンセラミックブレーキ(フロント)」「AMGパフォーマンスシート」を装備
C 63 Sが搭載するV型8気筒DOHC 4.0リッター直噴ツインターボ「M177」型エンジンは最高出力375kW(510PS)/5500-6250rpm、最大トルク700Nm(71.4kgfm)/2000-4500rpmを発生
インテリアでは最新のAMGデザインのステアリングを採用。Sモデルではステアリングから手を離さずに走行モードを変更できる「AMGドライブコントロールスイッチ」を装備する。横方向のサポートを強化した「AMGパフォーマンスシート」がスポーティな印象を高める
ダイナミックセレクトの走行モード。「Comfort」「Sport」「Sport+」「Race」「Individual」「Slippery」が用意され、ステアリングの「AMGドライブコントロールスイッチ」で走行モードを選択可能

9速化による恩恵

 高性能版のC 63 Sは、標準のC 63よりも34PS高い510PSの最高出力と、50Nm高い700Nmの最大トルクを誇るのだが、スペックのとおり極めて俊敏なレスポンスと全域がパワーバンドであるかのような、どこからでもついてくる強烈なパワーにはただただ圧倒されるばかり。それはもう目の覚めるような速さ。こんなクルマを全開で走らせることができるのは、本当に至福のひとときだ。いかにもAMGらしい、弾けるようなエキゾーストサウンドもたまらない。

マイナーチェンジ前のC 63 Sにも試乗できた

 DCTが多段化されたのも今回のポイントで、これまでも7速もあればもう十分と思っていたのだが、9速に増えるとそれはそれでよいものだ。エンジンは十分すぎるほど力があるとはいえ、やはりシフトアップ時の回転落ちが小さいに越したことはないし、エンジンの美味しいところを引き出してより気持ちよく走れる。ハイスピードコースの富士スピードウェイでも、Bコーナー以降の後半のセクションで特にその恩恵を感じる。シフトチェンジ時のショックも新型の方が小さく、ダイレクト感という意味では従来型の方がある気もしたが、新型の方が洗練されている。

 富士スピードウェイを全開で走らせてこのクルマが真価を発揮するのはエンジンパワーだけではない。驚くほど俊敏な鋭い回頭性もまた超・刺激的だ。走行状況に応じて瞬時にマウントの硬さを自動的に調整し、スポーツ走行時には硬くして駆動系のイナーシャを払拭するという「AMGダイナミックエンジンマウント」の恩恵もあらためて実感する。これも効いて、クルマと一体になったかのようなダイレクトなハンドリングを味わえるのはC 63 Sならでは。それはライバルを凌駕する部分に違いなく、新旧とも変わらない。

 ただし、サスペンションや電子制御LSDに関する変更は伝えられていないものの、実際には細々と手が入っているようで、ドライブした印象は少なからず変わっていた。いずれもサーキットに適したレースモードで走行したのだが、従来型は特性がピーキーで、かなりシビアなアクセルワークを心がけないと簡単に横を向く。

 立ち上がりでは従来型が横に逃げがちなのに対し、新型は滑りながらも前へ進んでいく感覚が強い。この差は小さくない。また、ターンインでは心なしか従来型の方がよくいうとシャープに感じられたのだが、それにはリアのスタビリティが新型の方が高いからかもしれない。従来型もそのあたりがまた楽しかったりするわけだが、完成度としてどちらが高いかは言うまでもないだろう。

9段階のトラクションを選択可能

 ESPボタンの長押しでOFFになるのは新旧同じだが、新型はレースモードでリアのトラクションを9段階から選べるようになったのも新しい。試すと「1」ではESP ONに近いほどグリップし、「9」にするとかなりのところまでスリップを許容する制御となる。これにより幅広いスキルのユーザーがこのクルマを操って楽しめるようになることだろう。

 ステアリングの切れ角が大きいC 63 Sなら、かなり横を向いても立て直しやすいのだが、新旧ともドリフトを維持するのは少々難しいセッティングとなっていて、ESPをOFFにした状態でもクルマ側がカウンターステアの状態をできるだけ早く収めようとする。これは安全マージン確保のためあえてそのようにしているのではないかと思う。

 ブレーキについても、試乗車にはC 63 Sに新設定された強固で軽量なディスクを備えた「AMGカーボンセラミックブレーキ」が装着されており、そのおかげかメーター読みで約280km/hからのハードブレーキングを繰り返してもフィーリングは安定していて、コントロール性にも優れることも印象的だった。

 全体としては、主に電子制御デバイスの進化が効いてだろうがドライブフィールはずいぶんと洗練された印象を受けるものとなっていた。

直6ならではの吹け上がりとサウンド

9月にデビューした「CLS 53 4MATIC+」は1274万円。ボディサイズは5001×1896×1422mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2939mm

 一方のCLS 53 4MATIC+も、世界屈指の高速サーキットとして名高い富士スピードウェイを本気で攻めるような性格のクルマではないような気がしていたのだが、こともなげに走り切ってしまうとは予想を超えていた。これだけ走れてしまうとは恐れ入る思いだ。

 ISGと電動スーパーチャージャーを備えた3.0リッター直6エンジンはレスポンスに優れ、低速から力強く、全開で走らせるとスムーズな吹け上がりとともに直6らしい美しいサウンドをずっと楽しませてくれる。AMGスピードシフトTCTは、トルコンATながら全開で走らせてもタレが小さい。C 63 Sをドライブした後だと感覚がマヒしていて不利なのだが、CLS 53 4MATIC+もなかなかのもの。0-100km/h加速が4.5秒と、5秒を切るだけのことはある。

直列6気筒DOHC 3.0リッター「M256」型エンジンに大型のターボを組み合わせ、最高出力320kW(435PS)/6100rpm、最大トルク520Nm(53.0kgfm)/1800-5800rpmを発生。エンジンとトランスミッションの間にオルタネーターとスターターの機能も兼ねる電気モーターの「ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)」を配置。最高出力16kW、最大トルク250Nmを発生するISGと48V電気システムで回生ブレーキによる発電を行ない、約1kWhの容量のリチウムイオンバッテリーに充電

 切れ味鋭い回頭性を身に着けながらも操縦安定性は極めて高く、C 63 Sとは違ってアクセルワークで挙動が大きく出ることはまずない。これには4MATIC+も効いていることに違いない。適度に引き締まった足まわりは、200km/hオーバーの領域でもなんら不安を感じることもない。ブレーキ性能も動力性能に見合うキャパシティは十分に確保されている。

 こうして最新のメルセデスAMGモデル2台を富士スピードウェイで思いっきり走らせて、それぞれ大いに感心させられた次第である。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛