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スーパー耐久最終戦富士、「水素技術」の発展とともに歩んだ2023年を振り返る「カーボンニュートラル科学館」
2023年11月12日 08:52
- 2023年11月11日~12日 開催
モータースポーツにもカーボンニュートラルは必要不可欠
スーパー耐久機構事務局(S.T.O)は11月11日~12日にかけて、富士スピードウェイにて「ENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE 第7戦 S耐ファイナル 富士4時間レース with フジニックフェス(以下、S耐最終戦)」を開催している。
スーパー耐久シリーズでは、2021年にトヨタ自動車が水素エンジンを登載した「GRヤリス」を投入して以来、マツダ、スバル、ホンダ、日産らが続々と“走る実験室”として自動車のカーボンニュートラル実現に向けた活動を進めている。
それに合わせて各サーキットのイベント広場では、カーボンニュートラルを楽しく学べる「カーボンニュートラル科学館」を実施していて、3月の第1戦鈴鹿から、9月の第6戦モビリティリゾートもてぎまでで、のべ8万3600人が参加したという。今回は最終戦ということで、1年間の活動を振り返るとともに、いつもどおり大人から子供まで楽しめるブースを出展しているので、ぜひ足を運んでみてほしい。
大林組
建設業の大林組は、11月9日に発表したばかりの、FCEV「MIRAI」の水素タンクに使用されるCFRPをコンクリート補強用短繊維として再利用する技術を展示している。MIRAI用の水素タンクには、強固なカーボンファイバーが何重にも巻かれていて、交通事故のような瞬間的に大きな入力があっても破損しないように設計してある。
今回はそのカーボンファイバーをカットしたものと、新たな技術「リカボクリート工法」によって実際に補強用短繊維として再生利用されている状態のコンクリート塊をはじめ、水素ができるまでや貯蔵などに関するパネル資料も展示している。
川崎重工業
川崎重工業は、未利用褐炭をガス化し、マイナス253℃にまで冷却することで、体積を気体の800分の1に圧縮した液化水素として日本へ運ぶため、2019年に液化水素運搬船(技術実証船)として「すいそ ふろんてぃあ」を建造。すでにオーストラリアからの運搬に成功している。また、2023年5月のスーパー耐久富士24時間レースでは、新開発の液体水素用タンクを搭載したGRカローラが、マイナス253℃の液体水素を用いて見事24時間を走りぬいた。
川崎重工は水素に関して「大量消費」「大量輸送・貯蔵」「大量製造」とインフラ全体の拡大を重視していて、ブースでは液化水素をいかに効率よく運ぶかをテーマに開発中の「大型液化水素運搬船」の模型を展示。
全長は約300mクラスで東京タワー(333m)に迫るサイズで、搭載するタンク1つあたりの容量は4万kL(キロリットル)、4つ合計で一度に16万kLもの大量の液化水素を積むことができ、MIRAIなど水素自動車およそ178万台への水素充填が可能な量という。すでに設計図は完成していて、2030年の就航に向けて製造の準備を進めている。
ブースでは専用のアプリをインストールしてQRコードを読み取ると、大型液化水素運搬船をVR(バーチャルリアリティ)技術で体感できるゴーグルを用意。ドローンに乗って大型液化水素運搬船の見学体験ができる。ただし、ゴーグルは数に限りがあり、なくなり次第終了となるので、ご注意いただきたい。
マツダ
ユーグレナのバイオ燃料を使用して早くからS耐に参戦しているマツダのブースでは、9月14日に予約を開始した「MX-30 Rotary-EV」に搭載されるハイブリッドの発電ユニットとして使用される新開発の8C型ロータリーエンジンと、従来の13B型ロータリーエンジンを展示。
またブースではほかにも、ユーグレナが手掛けるバイオ燃料「サステオ(RD)」や、その原料となる「ミドリムシ」を顕微鏡で見ることができる。なお、最近はミドリムシではなく水素と廃油を使った燃料「サステオ(HVO)」を使用している。
HySE(水素小型モビリティ・エンジン技術研究組合)
カワサキモータース、スズキ、本田技研工業、ヤマハ発動機の4社が2023年6月に設立したばかりの「水素小型モビリティ・エンジン技術研究組合(HySE:Hydrogen Small mobility & Engine technology)」のブースでは、2024年にサウジアラビアで開催される「ダカール2024」(ダカールラリー:2024年1月5日~1月19日開催)の新カテゴリー“Mission 1000”に参加予定の水素燃料エンジン車「HySE-X1」と、搭載される水冷4ストローク直列4気筒1.0リッタースーパーチャージドエンジンを展示中。
TOYOTA GAZOO RACING
TOYOTA GAZOO RACINGのブースでは、現在スーパー耐久にて水素燃料で走らせている「GRカローラ」と、カーボンニュートラル燃料で走らせている「GR86」の2台のレーシングカーをより身近に感じられるようにと、「水素エンジンレーシングカート」と「カーボンニュートラル燃料レーシングカート」を展示。それぞれのマシンが縮小されたことをイメージした展示を行なっている。S耐最終戦では試乗はできないが、11月17日~18日17時~18時にラリージャパンが開催される豊田スタジアム会場でデモランを行なうという。
神戸製鋼所(KOBELCO)
神戸製鋼所は、これまで輸入した鉄鉱石の錆(=酸化)を取り除くためにコークス(石炭)を使用していたが、この方法だと酸素と炭素が結びつきCO2が発生するので、新たに水素を使った還元方法を開発。水素と酸素を結びつけることで水を生み出し、直接還元鉄(HBI)を生成。このHBIを使用することでコークスの使用量を削減し、実質CO2の排出量を減らすことに成功している。
また、この工法で製造した低CO2高炉鋼材を“サステナブル”の名称にあやかって「コベナブル スチール(Kobenable Steel)」と命名。出来上がった鉄そのものは同じだが、作られるプロセスで低CO2を実現していて、スーパー耐久で走行している32号車 ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptの一部のボルトに採用されている。